研究課題/領域番号 |
23380167
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (30175228)
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研究分担者 |
葛西 孫三郎 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (60152617)
越本 知大 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70295210)
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (00532160)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 凍結保存 / 卵子 / アクアポリン / MPTP |
研究概要 |
哺乳動物卵子の凍結保存は成功例が多数報告されているが、未だ安定して高い生存率は得られていない。その原因は細胞内氷晶が形成されやすいからである。成熟したミトコンドリアの内膜は透過性が極めて低いが、水チャンネルであるaquaporin (AQP) 8やAQP9、あるいはMitochondrial Permeability Transition Pore (MPTP)が発現しているので、水と耐凍剤はある程度透過できる。しかし、卵子ではミトコンドリアが未熟なので水と耐凍剤がこれらのチャンネルを介して移動できず、細胞内氷晶形成の起点になっていると考えられる。そこで、卵子にAQPの発現を人為的に誘導したり、発現しているMPTPを人為的に開口させたりすることによって、耐凍性が向上するかどうかをしらべた。まず、培養細胞等でAQP9の発現を誘導するrosiglitazone、オレイン酸、Wy14643を添加した培養液でマウス未成熟卵子を成熟培養し、エチレングリコールをベースとした保存液(EFS40)を用いてガラス化凍結した。しかしながら、耐凍性は向上しなかった。一方、AQP8の発現を誘導するdibutyl cAMPを添加した培養液で成熟培養した場合は、濃度依存的に凍結融解後の生存性が向上する傾向があったが、ばらつきが大きかった。次に、MPTPを開口させることによって卵子の耐凍性が向上するかどうかをしらべた。MPTPを開口させる酸化フェニルヒ素で処理した成熟卵子ではMPTPが開口し、凍結融解後の生存率も向上したが、2時間培養すると死滅した。カルシウムを含まない培養液での培養では、卵子のMPTPが開口すると速やかに卵子が死滅した。一方、サリチル酸では卵子のMPTPは開口しなかった。したがって、MPTPを開口させて耐凍性を向上させることは可能であるが、卵子に傷害を与えやすいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの結果から、ミトコンドリア内膜の透過性を向上させることによって、卵子の耐凍性を向上させるというアイディアそのものは正しいと判断される。しかしながら、卵子に傷害を与えずに安定して耐凍性を高めるまでには至っていない。すなわち、AQPの発現を人為的に誘導して耐凍性を向上させることについては、dibutyl cAMPによってある程度可能であると考えられるが、安定した結果がえられていない。また、MPTPの人為的な開口による耐凍性の向上については、酸化フェニルヒ素を使うことによって可能であることが確認されたが、すべての卵子が傷害を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
卵子や胚のミトコンドリアで発現しているAQP8、AQP9あるいはMPTPが、卵子や胚の耐凍性に実際に関与しているかどうか等、基礎的研究に力点を置いて研究を進める予定である。すなわち、AQP8、AQP9およびMPTPの構成タンパク質のdsRNAあるいはsiRNAをマウス未成熟卵子や1細胞期胚に注入して発現を抑制し、耐凍性が低下するかどうかをしらべる。
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