研究課題/領域番号 |
23380169
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
古澤 軌 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (00343997)
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研究分担者 |
木村 康二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (50355070)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 伸長胚 / ウシES細胞 / ゲノム改変 |
研究概要 |
【キメラ胎子の解析】 胚盤胞期(Day7)及び伸長胚期(Day14)のキメラ胚において、ウシES様細胞は内部細胞塊(ICM)及び胚盤に局在することが確認されている。さらに発生が進んだ胎子期における局在を調べるため、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を導入したES細胞株を樹立した。8細胞期宿主胚にGFP導入ES様細胞を注入し、胚盤胞期胚のICMにES細胞が確認された胚22個を1頭の受胚牛に移植した。6日後に子宮潅流によって伸長胚を回収し、胚盤及びその近傍にGFP陽性細胞が確認された伸長胚4個を再度2個ずつ2頭の受胚牛に移植した。Day30の妊娠鑑定で両受胚牛とも1頭の胎子が確認されたが、Day40で1頭の受胚牛で胎芽死滅が確認された。Day62にと殺により胎子と胎膜を回収した。胎子は雄型の表現系を示し、形態的な異常は認められなかった。蛍光実体顕微鏡による胎子体表及び各臓器の観察では明確なGFP発現は認められなかったが、ゲノムDNAのPCR解析によって、腸、肝臓、胃、心臓、腎臓、右前足及び頭部(脳をのぞく)にES細胞が存在していることが明らかになった。また羊膜の一部にGFP陽性細胞のクラスターが観察され、PCR解析においても羊膜と絨毛膜、及び死亡胎子の残存胎盤にES細胞が存在していることが明らかになった。以上の結果より、ウシES細胞は少なくともDay62の胎子組織に存在すること、また、胚体外組織にも寄与する可能性が示された。 【ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)によるゲノム改変操作】 設計したZFNが配列特異的な切断活性を持つことは昨年度までに確認されている。標的部位に相同的な配列とともにウシ繊維芽細胞に共導入した結果、セレクション後の細胞のおよそ0.03%で相同組換えが起こっていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、H24年度に伸長胚移植によるキメラ胎子の作成と解析を達成し、Day62の胎子においてもウシES様細胞が体内に存在することを示した。さらに、胚体外組織にも分化している可能性が示され、本細胞がこれまでICMから樹立された細胞とは異なる非常に興味深い性質を持つ可能性が示された。ただ、寄与率があまり高くないため、機能的分化の解析がやや遅れている。 ZFNによる相同組換えについても活性が確認され、ウシにおいてもノックイン等の高度なゲノム改変が可能であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
より効率的なキメラ作成法を確立するため、iPS技術を応用したES様細胞の高品質化と、ホスト胚ステージの最適化について検討を行う。また、ZFNを用いて生殖系列細胞特異的に蛍光タンパク質が発現するようにゲノム改変を施したウシES細胞及び繊維芽細胞を樹立し、クローンあるいはキメラ技術によってゲノム改変ウシ胎子を作成、解析する。
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