研究課題/領域番号 |
23380170
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 茂男 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (40109509)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脊髄 / 新生仔マウス / 鎮痛薬 / 反射電位 / キシラジン / α2受容体 |
研究概要 |
α2A受容体サブタイプ欠損(α2A-/-)マウスを用いて,α2作動薬デクスメデトミジン(DEX)とキシラジン(XYL)の脊髄反射電位に対する効果を検討した.また,脊髄アストロサイトからのアデノシン放出作用を検討するために,培養分離アストロサイトを用いて検討を行い,以下の結果を得た. ①野生型マウスでは,DEXとXYLは濃度依存性に単シナプス反射電位(MSR)と遅発性前根電位(sVRP)を抑制した.両薬物ともMSRよりもsVRPを強く抑制し,DEXの力価はXYLよりも約1000倍強かった.α2受容体拮抗薬アチパメゾールは,DEXのsVRP抑制だけを回復させた.②α2A-/-マウスでは,野生型マウスと比較してDEXのMSR抑制効果には差がみられなかったが,sVRP抑制効果は著しく減弱した.一方,XYLによる抑制効果には差は見られなかった.α2A-/-マウスで見られたDEXによるsVRP抑制効果は,アチパメゾールで回復した.③アストロサイトをアデノシン代謝酵素(アデノシンキナーゼ及びデアミナーゼ)阻害薬で処置すると,細胞外アデノシン量が増加した.この反応は,平衡ヌクレオチドトランスポーターENT2の阻害で抑制された.④アストロサイトを細胞外Ca除去液で処置すると,細胞外アデノシン量が増加した.この反応は,ecto-ATPase阻害薬及びギャップジャンクション阻害薬で抑制された. 以上の結果から,DEXのsVRP抑制にはα2A受容体が重要であるが,DEXのMSR抑制及びXLYの反射電位抑制効果は,α2A受容体以外の受容体を介して生じていることが示唆された.また,脊髄アストロサイトにおけるアデノシン代謝酵素阻害薬によるアデノシン増加は,ENT2を介していること,一方Ca2+除去によるアデノシン増加は,ギャップジャンクションを介したATP放出が関与していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な目的であった,α2受容体サブタイプ欠損マウスを用いた解析を行うことができた.また,脊髄アストロサイトからのアデノシン放出反応からも,新たな知見を得ることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
α2A受容体サブタイプ欠損マウスにおいて,α2作動薬デクスメデトミジンとキシラジンの作用に違いがみられたことから,両薬物の作用点をさらに検討する.関与が疑われる他のα2受容体サブタイプ(2B,2C)やイミダゾリン受容体について検討するとともに,in vivo痛覚試験を行い,脊髄侵害受容経路と痛覚に関与する受容体について検討する予定である.また,細胞外Ca2+除去によるアストロサイトからのATP放出経路をさらに検討するため,各種ギャップジャンクション阻害薬の効果や,ギャップジャンクションタンパクサブタイプの発現解析を行い,その放出メカニズムを明らかにする計画である.
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