α2A受容体欠損マウス(D79N)マウスを用いて,α2受容体作動薬デクスメデトミジン(DEX)とキシラジン(XYL)の痛覚反射と運動反射に対する効果を,摘出脊髄標本から反射電位を痛覚反射として遅発性前根電位(sVRP),運動反射として単シナプス反射電位(MSR)を記録することにより定量的に解析した.また,神経活動に影響を与える伝達物質である硫化水素とアデノシンの産生機構について,培養神経及びアストロサイトを用いて検討し,以下の結果を得た. ①D79Nマウスにおいて,DEXによるsVRP抑制はα2受容体拮抗薬アチパメゾールで回復したが,XYLによる抑制は回復しなかった.さらに,XYLによるこのsVRP抑制は,α2C受容体拮抗薬JP1302やイミダゾリンI1受容体拮抗薬efaroxan,I2受容体拮抗薬idazoxanによっても回復しなかった.以上の結果から,XYLのsVRP抑制には,α2受容体やイミダゾリン受容体を介さない機序が関与していると考えられる.②PC12細胞と知覚神経細胞の硫化水素産生は,pH依存性を示し,細胞質pH(7.0付近)よりもミトコンドリアpH(8.0付近)での方が,産生能が高かった.硫化水素産生酵素であるMPSTは,ミトコンドリアに局在していることが示された.③低Ca2+条件下で,脊髄アストロサイトからギャップジャンクションヘミチャネルを介して放出されたATPは,細胞外で分解されアデノシン蓄積を生じることが示された.
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