研究課題/領域番号 |
23380174
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (30171143)
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研究分担者 |
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00137241)
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40453138)
赤澤 隆 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), 分子遺伝学部門, 主任研究員 (80359299)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子導入 / 人工ベクター / がん免疫治療 / 樹状細胞 / トル様レセプターリガンド |
研究実績の概要 |
① サイトカイン遺伝子のin vivoにおける腫瘍細胞への導入によるDC治療効果の増強:昨年度は、GFP遺伝子を用いてpH感受性リポソームを含む人工ベクターによるマウス体内に移植した腫瘍細胞への遺伝子導入を検討し、ベクターの腫瘍内(IT)投与によっても、静脈内(IV)投与も腫瘍細胞内に遺伝子導入できることを明らかにした。今年度は、GFP遺伝子に代わって、マウスIFNγ遺伝子を人工ベクターによってマウス体内に移植し増殖させた腫瘍細胞株に導入した後、腫瘍抗原を提示させたDCを腫瘍内に注入して腫瘍の増殖に対する抑制効果を検討した。マウスIFNγ遺伝子を内包した人工ベクターをITあるいはIVに投与したマウスでは、プラスミドDNAのみを内包した人工ベクターを投与したマウスに比べてDC治療によってより効果的な腫瘍の増殖抑制が認められた。特にIFNγ遺伝子を内包した人工ベクターのIV投与されたマウスでは、無処置マウスに比べ有意な腫瘍増殖抑制がみられた。 ② DCの抗原提示能および免疫活性化能の亢進:がん免疫の主体であるCD8+細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化ために、低pHによって融解するpH感受性ポリマーを含むリポソーム(pH感受性リポソーム)で抗原を内包し、エンドソーム内の低いpHによってリポソームとエンドソームの膜融合をおこさせ、エンドソームから細胞質への脱出効率を高め、それにより、HMCクラスI分子上への抗原提示効率を著しく高めることができた。さらにpH感受性リポソームにDC選択性トル様レセプターリガンド(TLR-L)を組み込みDCの抗原提示能と免疫活性化能を同時に高める新薬を開発した。抗原として卵白アルブミン(OVA)を新薬で内包し、これを作用させたDCによって、マウス体内に移植したOVAペプチドを提示する腫瘍株E.G7の増殖を抑制することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度予定していたサイトカイン遺伝子のin vivo導入による腫瘍増殖抑制効果に成功した。また、トル様レセプターリガンドとCox2阻害薬を併用したイヌの自然発症がんに対する治療症例を追加した。さらに、トル様レセプターリガンドとpH感受性リポソームを組み合わせた免疫増強効果を示す新薬の開発に取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
サイトカイン遺伝子のin vivoにおける腫瘍細胞への導入によるDC治療効果の増強につては、IFNγ遺伝子の他にCD40リガンドの遺伝子導入による腫瘍抑制効果の増強をマウス担癌モデルを用いて検討する。 PH感受性リポソームを含む遺伝子導入ベクターの他にポリエチルエナミンなどのカチオン粒子とDNAにヒアウロン酸などを組み合わせた三元複合体などの人工ベクターを用いて遺伝子導入を行い、腫瘍増殖抑制効果を検討する。
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