研究課題
本研究は、口蹄疫との類症鑑別が困難なパラポックスウイルス感染症について、新たな迅速診断法を開発することを目的とする。パラポックスウイルス感染症には、牛の丘疹性口炎、偽牛痘、羊や山羊、アカシカ、ニホンカモシカの伝染性膿疱性皮膚炎、ヒトの搾乳者結節、などが含まれ、5種類の原因ウイルスが知られている。いずれもヒトにも感染し皮膚に発痘するため、人獣共通感染症の原因となる。本年度は、前年度に標準ウイルスを用いて開発した2種類のパラポックスウイルス検出用LAMP法(牛丘疹性口炎原因ウイルスの迅速診断に特化した高感度LAMP法と、パラポックスウイルス属すべての検出を目的とした共通LAMP法)について、実際に野外分離ウイルス株、発症部位から抽出したDNAで診断に利用出来るか検討した。開発した2種類のLAMP法により、国内で分離された7株の牛丘疹性口炎ウイルスすべてを1時間以内に検出することができた。しかし、国内発症牛の病変部から抽出したDNA10検体を用いて検討したところ、それぞれのLAMP法で検出できない検体があり、開発したLAMP法は野外での診断に用いることができないと判断した。そこで、LAMP法用のプライマーを再度デザインし直した。新しく改良したプライマーを用いたLAMP法により、すべての検体からウイルス遺伝子を検出することに成功した。実際に農場で、LAMP法を用いてパラポックスウイルス感染症の診断を可能にするため、持ち運びできる遺伝子増幅反応用ヒートブロックを製作した。電源のない放牧場でも利用可能にするため、ヒートブロックを設定温度まで上昇させたあと、保温により温度を維持する装置を目指したが、温度を一定に維持することができなかった。そこで、小型バッテリーを搭載させたコードレスヒートブロックを製作した。小型軽量で1時間以上温度を一定に保つことができたことから、オンサイトでの遺伝子診断の実用化が期待できると思われた。
3: やや遅れている
開発したLAMP法は、野外の臨床材料を用いると一部検出できないことが判明したことから、再度プライマーをデザインし直し、あらためて条件検討の必要があったため。しかし、診断法の実用化に向けて恒温維持装置の製作に成功したことから、最終的には目的を達成できる見込みである。
改良したLAMP法の感度、特異性、迅速性、簡便性などをあらためて、標準ウイルス、クローニングしたウイルス遺伝子を用いて検証する。従来法である、PCR法、リアルタイムPCR法、論文で発表されたオーフウイルス検出用LAMPなどと比較する。携帯型の小型コードレスヒートブロックを用いたLAMPによるパラポックスウイルス感染症診断を、実際に農場で実施し、実用化に向けてその有用性を評価する。
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