研究課題
昨年度は、狂犬病ウイルスERA株の遺伝子操作系を用いて、NおよびG蛋白質上に弱毒化変異を有するERA-NG株を樹立し、その高い安全性および免疫原性を示すことに成功した。本年度は、このERA-NG株をベースとして、さらに安全性の高いワクチンの開発を試みた。具体的には、本株のP遺伝子欠損ウイルス、ならびにM遺伝子欠損ウイルスを混合したウイルス(遺伝子欠損混合ウイルス)を作出し、狂犬病ワクチンとしての安全性・免疫原性を検証した。この遺伝子欠損混合ウイルスは、2種類の遺伝子欠損ウイルスが同一の細胞に共感染した場合のみ、当該欠損を相補し、子孫ウイルス(遺伝子欠損型)を産生することから、ERA-NG株よりもさらに高い安全性が見込まれる。最初に、弱毒化変異を有しないERA株のPおよびM遺伝子欠損混合ウイルスが高度に弱毒化されていることを確認した。また、本混合ウイルスがVero細胞において効率よく増殖することが判明した(培養液中の感染価:6.3 x 10^7 FFU/ml)。さらに、Vero細胞において本混合ウイルスを継代した場合でも、2種類の遺伝子欠損ウイルスのゲノム間に組換えは起こらず、その弱毒性状が安定に維持されることが確認された。次に、ERA-NG株を用いて、同様の遺伝子欠損混合ウイルスを作出した。本混合ウイルスは、ERA株の混合ウイルスと同様に、高度に弱毒化されていることが確認された。また、10^6 FFUの本混合ウイルスをマウスに筋肉内接種した結果、感染防御に十分と考えられる中和抗体が血清中に誘導されることが判明した。実際、強毒株の脳内接種することで攻撃試験を実施し、すべての免疫マウスが生存することを確認した。以上の成績より、ERA-NG株が極めて高い安全性を持ち、狂犬病生ワクチンとして有望であることを示すことができた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Journal of Infectious Diseases
巻: in press ページ: in press
10.1093/infdis/jit829
Journal of Virology
巻: 87 ページ: 12327-12338
10.1128/JVI.02132-13