研究概要 |
犬のカセリジシンのアミノ酸配列よりプライマーを設計し,PCRを行い,得られた増幅産物を基にしてシークエンスを行い塩基配列を確認した。その絵で大腸菌に塩基配列を組み込みリコンビナント蛋白を作製したが,ヒト抗体を用いたウエスタンブロットならびに蛍光抗体では反応をしなかったため,引き続きプライマーを変更してリコンビナント蛋白を作成中である。一方,抗ヒトカセリジシン(LL-37/hCAP18)マウスモノクローナル抗体(Hycult)はヒトのカセリジシンのプロペプチドであるhCAP18および成熟ペプチドであるLL-37に対するモノクローナル抗体であるが,この抗体を用いて犬の背部,腹部,鼻鏡および肉球皮膚における局在をしらべた。その結果,基底層,有棘層および顆粒層に相当する部位が染色された。また,犬の皮膚の脂腺,アポクリン腺など皮膚附属器にもカセリジシンが局在すると考えられた。また,本抗体を用いて皮膚の抽出タンパク質を基質として免疫プロット法を行ったが,バンドは得られなかった。 次にカセリジシンのアミノ酸は入れ列を基にして科学的にペプチドを合成し,犬の膿皮症症例より培養したStaphylococcus pseudintermediusの5株との間で,Minimum Inhibition Concentration(MIC)を求めた。その結果,E. coli ATCC 25922株に対するイヌカセリジシンのMICは0.39μM,感受性 s. pseudintermediusのMICは5株中,1株で0.195μM,3株で0.39μM,1株で0.78μMであった。多剤耐性 S. pseudintermediusのMICは5株中2株で0.39μM,3株で0.78μMであった。これらのことから,犬の抗菌ペプチドであるイヌカセリジシンは,イヌの皮膚に広く分布することが明らかになり,今回イヌの細菌性膿皮症から採取したすべてのS. pseudintermediusに対して抗菌活性を有することが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
合成カセリジシンでは蛋白の大量合成が難しいので,できるだけ早く大腸菌を用いたリコンビナント蛋白を多く作製したい。また,これに加えてバクテリオファージを現在検討中であるが,S. pseudintermediusに溶菌性のあるものを今後も探索を続ける。また,これらに加えて金属イオンを用いた抗菌活性物質についても研究を続ける。
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