研究概要 |
【ブタ脂肪由来間葉系幹細胞の移植】 ブタの頸部皮下脂肪の一部を無菌的に切除・採取し,0.05%Trypsin及び0.1%CollagenaseTypeIにより処理して脂肪組織を除去した後,遠心分離した細胞を培地と懸濁して10日間培養した。初代培養期間をPassageO(PO)として培養し接着した細胞をフラスコから剥離させて培地を加え,新たなフラスコに播種して継代した。4×10^7個の細胞が得られるまで継代を繰り返し,96穴プレートに1穴あたり5×10^4個の細胞を播種した後さらに2日間培養して,細胞集塊(スフェロイド)を形成させた。スフェロイドを直径4mmの円柱型モールドに詰め込み,さらに7日間培養して移植用プラグを作成した。マイクロミニブタの両側の大腿骨一膝蓋骨間関節を切開し,大腿骨の滑車溝背側面に外径4mmのパンチにて深さ5mmの骨軟骨欠損孔を創り,右側には移植用プラグを無菌的に充填した。一方,左側には欠損孔のみ(対照)として移植を行わなかった。右側の大腿骨及び脛骨を創外固定により1~4週間固定した後,移植後4週間ごとにX線CT検査にて経過を観察している。このように実験計画は順調に進行している。 【ウマ滑液由来間葉系細胞の採取】 関節症と診断された馬の関節から無菌的に滑液を採取し,培地を加え,遠心分離して上清を除去した。沈渣として回収された細胞を培地と懸濁し,10日間培養した。この初代培養期間をPassageO(PO)とし,接着した細胞をフラスコから剥離させて培地を加え,再び播種して継代した。P3もしくはP4で目的とする細胞数(1×10^7個)となった。細胞表面抗原の検索結果からこれらは間葉系幹細胞のキャラク「ターを有し,骨及び軟骨への分化誘導が確認されたことから移植に使用できる細胞である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎実験である脂肪組織からの間葉系幹細胞の分離・培養法を確立し,骨軟骨欠損孔へのプラグ移植を4頭のブタで実施できた。次年度はこれら実験ブタの組織学的評価を行う予定である。先に行う計画となっているウマの幹細胞移植に向けて,臨床例から材料を得やすい関節液からの幹細胞分離を試み,これもすでに分離・培養を可能としている。移植に必要とされる細胞数も3~4継代で達成できており,ウマから脂肪を得なくとも骨軟骨欠損へ適用する移植片を作成できると考えている。
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