研究概要 |
実験用ミニブタを用い,大腿骨内側顆荷重面に大型欠損孔を作成して,脂肪由来間葉系幹細胞(AT-MSC)の凝集塊を三次元配置した構造体を移植し,その後の骨軟骨の再生について,CT画像診断で評価した。 【実験1】局所麻酔の後,皮膚小切開から注入用カニューレを挿入し,チューメセント液を注入した。吸引用カニューレを挿入し,シリンジにて陰圧をかけながら,皮膚から皮下脂肪を擦り落とすようにカニューレ先端を動かしてチューメセント液と脂肪組織を回収した。これを繰り返して30g程度の脂肪を吸引した。50,000個のAT-MSCを1つの凝集塊とし,それを1,000個堆積して,円柱状(直径6.7mm,深さ10mm)の移植構造体を創った。大型化しても形状を維持できる特殊なストロー内での堆積・培養法を用いた。 【実験2】膝関節の内側から膝蓋靭帯に沿って脛骨粗面に達するまで切皮し,関節包を切開して大腿骨内側顆荷重面を露出させた。外径6.7mmの骨円鋸を用いて深さ10mmの骨軟骨欠損孔を作成した。右膝では,ストローに入れた構造体を欠損口に充てて挿入し,構造体を巻く薄いフィルムを剥がして,欠損孔内に全体を静かに納めた。左側は対照とした。 【実験3】X線CTを用いて骨軟骨欠損孔の再石灰化を画像診断した。1頭のミニブタでは,移植肢の欠損部における再石灰化が周辺骨との境界部から進行し,術後7か月で80%近い再石灰化が確認された。残る2頭のミニブタは,術後2及び4カ月であり,同様に移植肢は対照肢に比べて欠損部における再石灰化が早まっている。 【まとめ】膝関節非荷重面(滑車溝)におけるAT-MSC凝集塊構造体の移植成果を基に,臨床応用を想定して,より大型の骨軟骨欠損孔を同関節荷重面に作成し,細胞移植治療を試みた。非荷重面移植の場合と同様,移植した欠損孔は再石灰化が早まることが生体の画像診断で確認された。今後は病理組織学的な骨軟骨再生を行う。
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