研究課題/領域番号 |
23380186
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
清水 佳奈子 独立行政法人理化学研究所, 免疫治療モデル開発研究ユニット, ユニットリーダー (20391980)
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研究分担者 |
藤井 眞一郎 独立行政法人理化学研究所, 免疫細胞移植戦略研究ユニット, ユニットリーダー (10392094)
水野 拓也 山口大学, 獣医学部, 教授 (90398826)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自然免疫 / 獲得免疫 / 樹状細胞 / 癌ワクチン |
研究概要 |
現在のイヌにおける癌治療は手術、放射線治療及び化学療法が主流であるが、このような治療法では、残存腫瘍細胞が多く、再発が多いのが現状である。我々の提唱する癌ワクチンは、従来の治療法とは異なり、自然免疫と獲得免疫を同時に誘導しうる画期的免疫治療法であり、本研究課題ではイヌ悪性腫瘍において有用な腫瘍抗原をスクリーニングし、その抗原を標的とした新規癌ワクチンの開発を行うことを目的とする。 H23年度にWT1抗原の発現に関してイヌ腫瘍とイヌ正常組織における検討をすすめていたが、複数の抗体で検討したものの正常組織における発現を完全には否定できない結果となった。そのため、研究グループで議論した結果、悪性黒色腫の腫瘍抗原であるtyrosinaseに切り替えることにした。tyrosinase 抗原はヒト臨床においても悪性黒色腫の有用な抗原であり、Bergman PJ らの報告(Clin Cancer Res 2003)ではxenogenic DNA ワクチンとしてhuman tyrosinaseを用い、進行悪性黒色腫のイヌにおいて生存期間の延長を認めている。そこで、H24年度は1)イヌメラノーマ細胞株においてtyrosinase抗原の発現を確認(水野担当)し、2)新たにhuman tyrosinase mRNAを遺伝子導入したイヌ人工アジュバントベクター細胞を作成し(清水担当)、3) 健常犬に対し、この人工アジュバントベクター細胞を免疫した(水野担当)。 免疫後、理学所見において特に副作用は認めず、血液学的、生化学的所見でもワクチンに関連したと思われる異常所見はなかった(水野担当)。4) 現在免疫学的解析を進めており、免疫動物において明らかなNKT細胞の増加を認めている(清水・藤井担当)。今後、血中のサイトカインやT細胞の免疫応答に関しても解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍抗原の変更は、有害事象を考慮するとやむを得なかった。しかしながら、tyrosinase抗原に変更後は、細胞の作成から健常犬への免疫、その解析までおおよそ予定通りに進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在すすめている健常犬を用いたin vivoでの免疫応答の解析とともに、担癌犬において免疫能を検討する予定である。免疫療法を施行する上での、従来の化学療法との組み合わせ等のプロトコールについて臨床サイドと討議していきたいと考えている。
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