研究課題/領域番号 |
23380192
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
原 正和 静岡大学, 農学部, 教授 (10293614)
|
研究分担者 |
河岸 洋和 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70183283)
堀池 徳祐 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任助教(テニュア・トラック) (20535306)
|
キーワード | 天然変性蛋白質 / デハイドリン / 重金属 / アミロイド |
研究概要 |
重金属汚染は、重篤な化学汚染である。重金属の浄化は容易ではないが、近年、植物を使って浄化しようとする試みがある。その成功には、重金属を高濃度に蓄積してもなお生育できる超集積植物(ハイパーアキュムレーター:HA)が必要である。既存のHAは、小型で生長が遅いという難点があるため、HAの重金属蓄積能力を、大型で生長が早い通常植物へ導入する試みが始まっている。ところが、重金属耐性が思いのほか低かったり、重金属環境下に移植した途端に枯れてしまう事が多く、実用化への障壁となっている。 そこで、通常植物に見られる潜在的な"重金属への弱さ"のメカニズムを解明できれば、それを取り除くことで、本質的に重金属に強い植物の育成が可能となる。 これまでに、代表者は、植物には不定形でルーズなタンパク質が存在し、それらは重金属と結合することを見出してきた。さらに、重金属との結合の際に、凝集体を形成することを発見した。このような性質は、ヒトの脳神経疾患であるアルツハイマー病やパーキンソン病の原因である、アミロイドタンパク質の性質によく似ている。そこで、代表者は、植物にもまた、アミロイド様のタンパク質が存在し、重金属生理に関わっているのではないかと着想した。そして、植物のアミロイドの形成を抑制する薬を開発できれば、通常植物の"重金属への弱さ"を克服する画期的な技術となると考えた。 本年度、植物アミロイド様タンパク質の候補であるAtHIRD11が、通常、完全な不定形状態にあるが、低濃度の重金属で容易に二次構造を変化させて凝集体となること、重金属を含む土で栽培した植物ではAtHIRD11が凝集体として存在することを見出した。さらに、凝集化に必要なアミノ酸残基を特定することに成功し、その残基の配列パターンと凝集効率の間に、線形的な数式が成り立つことを見出した。これらの結果は、植物におけるアミロイド形成を抑制し、結果として重金属耐性を向上させる薬の開発に、重要な情報を提供する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、スタート年度である。当初予定していた、植物におけるアミロイドタンパク質の性質のうち、天然変性状態の確証を得ることに成功した。その上、重金属による凝集化に関わる残基の特定に成功し、その配列と凝集性との関係を数式化することができた。このように、存外に研究は進展したので、この評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降、基本的に当初の計画通りに進めたい。なお、初年度で、植物アミロイド候補遺伝子が、完全な変性状態にあることが判明したため、当初予定していたNMR解析を中心としたパイプラインから、当方が開発中のCDとFTIRを中心とした解析にシフトする可能性がある。
|