研究課題/領域番号 |
23380192
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
環境農学
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
原 正和 静岡大学, 農学部, 教授 (10293614)
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研究分担者 |
堀池 徳祐 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任助教 (20535306)
河岸 洋和 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70183283)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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キーワード | 天然変性蛋白質 / デハイドリン / 重金属 / アミロイド |
研究概要 |
本研究では、アミロイド様の物性を示すタンパク質を植物に見出し、そのタンパク質が、高濃度の重金属に汚染された土壌で栽培された植物の中で、有害化する過程を調査する。H24年度では、計画通り、植物アミロイド候補遺伝子である、デハイドリンAtHIRD11に関する物性変化を詳細に解析した。はじめに、凝集体の形成を、異なる金属イオンの存在下で調査した。その結果、AtHIRD11と結合することが分かっている金属種(ニッケル、銅、亜鉛)が存在すると、低速遠心で沈降可能な凝集体が形成されることが分かった。一方、AtHIRD11と結合しないマグネシウムやカルシウムは、AtHIRD11の凝集を誘発しなかった。次に、凝集化したAtHIRD11の物性が、典型的なアミロイドと似ているか否かについて調査した。CDスペクトル、FTIRスペクトルにより、タンパク質の二次構造を解析したところ、AtHIRD11は、上記の重金属により、ヘリックス構造もシート構造も示さず、金属非存在下における変性状態を維持していた。これは、高度にパッキングされた凝集体を形成する典型的なアミロイドとは異なる応答であった。そのほか、計画にある種々の分析を行った結果も併せ、AtHIRD11は重金属によって柔軟性の高い特異な凝集を起こすと結論付けた。さらに、AtHIRD11がこのような凝集体を形成するには、亜鉛を例にすると、植物体内の平均的な亜鉛含量と平均的なAtHIRD11含量との比率に対し、亜鉛濃度が約10倍過剰になるときに起こる現象であることが分かった。従って、重度の亜鉛汚染土壌で生育する植物体内では、AtHIRD11は凝集体になっている可能性が示唆される。重金属蓄積植物スラスピーでは、AtHIRD11様遺伝子の発現が抑制されていることから、AtHIRD11の凝集化の抑制が、重金属耐性と関わりがある可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
われわれは、植物のアミロイドタンパク質は、動物の脳神経疾患等に関与するアミロイドとは異なる性質を示すのではないかと予想していた。その予想通り、われわれが植物におけるアミロイド候補タンパク質と目しているAtHIRD11に関し、種々の物性試験を適用したところ、柔軟性のある特異な凝集体を形成することが判明した。この構造変化は、高度にパッキングされた凝集体を形成する典型的なアミロイドとは異なっていた。すなわち、植物アミロイド候補タンパク質と、従来のアミロイドタンパク質との物性の違いが浮き彫りになった。さらに、試験管内でAtHIRD11が凝集化する重金属濃度域を割り出すことに成功し、重金属汚染土壌で育つ植物における重金属含量の範囲と近いことから、植物アミロイド候補遺伝子が、重金属による毒性発現に一部関与していることが予想された。このように、本研究の計画当時に予想されたスケジュールで研究が進展しており、概ね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、研究は、概ね計画通りに進んでいる。現状では、H25年度以降、研究計画を変更する必要はないと考えている。H25年度では、計画通り、凝集体の毒性発現メカニズムを追求したい。
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