研究課題/領域番号 |
23380200
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
人見 清隆 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (00202276)
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キーワード | 酵素 / 蛋白質架橋 / 細胞機能 |
研究概要 |
本年度は以下の3つの項目について実施した。 1.新規蛋白質架橋化酵素の高反応性基質配列の探索と解析 蛋白質架橋反応を担う酵素、トランスグルタミナーゼには8種のアイソザイムが存在する。その基質検索を、我々が得てきた高反応性基質配列(ペプチド)を用いて行うことが本研究の一つの目的であった。既知のものについて幾つか基質検索を行って系の確立を行ったが、本年度は特に、このファミリーのうちで新規な酵素群(TGase 7)について、これまで確立してきたファージディスプレイによる探索系を用いて、その配列を明らかにした。この配列を組み込んだ融合蛋白質の解析から、特異的で反応性の高い配列が得られたことが分かった。またこれと並行して、TGase 6, TGase 7についての遺伝子発現の組織分布を、リアルタイムPCRによる定量的な反応により明らかにした。 2.モデル生物を用いた蛋白質架橋化反応の生理的意義の解析 モデル生物として有用な魚類、メダカを対象に、この蛋白質架橋化酵素について解析した。遺伝子情報データベースから、5種の遺伝子を有する事、およびその推定アミノ酸配列を明らかにし、そのうちの一種について遺伝子発現欠失変異体の作製を行った。その結果、現在その活性変異体の表現型、遺伝子型を解析中である。 3.蛍光ペプチドによる細胞・組織での活性発現解析 今年度は、蛍光標識基質ペプチドを用いて、胎児の発生段階に伴う活性発現パターンを解析した。皮膚型、組織型のTGについて、組織形成に伴う特徴的な変化を初めて明らかにした。 最終目的としてのFRET現象を用いての細胞内活性システムについては、新規に得られた蛍光ペプチドも含めて他アイソザイムの交差性、感度を検討した段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)の新規架橋化酵素の高反応性基質配列の解析を進めたが、配列自体の生化学的性質は予定通り明らかにしたものの、基質検索にまだ行っていない。(2)のメダカの変異体作製については、該当するアイソザイムの組換え体発現には成功し、変異体作製も行った。現在その表現型、遺伝子型を解析中で当初予定より進んでいる(3)については、蛍光標識ペプチドの基質としての有効濃度を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
新規な蛋白質架橋化酵素の基質配列は、そのペプチド基質としての有効性を確かめた上で、基質検索を発現組織を特定した後に行う。また、メダカの変異体については、皮膚形成や発生段階の異常に注意しながら、その表現型を追跡して、細胞機能との関わりを推察する。また、別のアイソザイムについても挑戦して、さらなる情報獲得をめざしたい。 蛍光標識ペプチドを用いての、細胞内レベルでの活性測定系の開発を進めるために、ペプチドの有効性(アイソザイム交差性)を確認し、細胞内導入効率の向上、in vitroでの活性産物の検出法の確立を進める。
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