研究課題/領域番号 |
23380204
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹川 薫 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (50197282)
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キーワード | 分裂酵母 / 凝集素 / ピルビン酸 / 糖鎖 |
研究概要 |
本申請は分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの糖鎖中に含まれるガラクトース残基の生合成およびガラクトース鎖の生理的機構、さらにガラクトースに付加するピルビン酸の生合成および役割について明らかにすることを目的としている。今年度は分裂酵母の凝集素遺伝子SPCC1742.01(gsf2+)の同定および特性解析を行った。分裂酵母Gsf2タンパク質は1,563個のアミノ酸からなり、C-末端部分にGPIアンカー配列を持ち、細胞表層に局在していることを確認した。また細胞表層のピルビン酸付加が欠損するpvg1変異株で凝集素遺伝子を発現させた場合に、野生株よりも早く凝集が引き起こされることから、細胞表層糖鎖へのピルビン酸の付加は分裂酵母の凝集を負に制御していることが明らかになった。またピルビン酸付加と凝集についてさらに解析している過程で、ピルビン酸付加に関与すると他研究グループにより報告されていたpvg4遺伝子破壊株において正常にピルビン酸が付加されていること、そして興味深いことにpvg4遺伝子が凝集素fsf2遺伝子の発現を制御していることを明らかにした。分裂酵母のピルビン酸付加に重要なピルビン酸転移酵素をコードするpvg1遺伝子を大腸菌で発現させ、組換えPvg1タンパク質を単一タンパクまで精製を行った。得られたPvg1タンパク質が実際にパラニトロフェニル(pNP)-α-ガラクトースヘピルビン酸を付加することができることを、NMR等を用いて構造決定することにより同定した。pNP-ラクトースのガラクトース残基へも本酵素はピルビン酸を転移できることがわかったが、グルコースやマンノースには転移できないことがわかり、Pvg1がガラクトース特異的にピルビン酸を付加することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂酵母のガラクトースを認識して細胞を凝集させる凝集素遺伝子について国際誌のMol.Microbiol誌に発表することができた。さらにピルビン酸糖鎖および凝集素遺伝子の発現を調節する新規転写因子を同定することができEukaryo. Cell誌に発表できたこと、ピルビン酸化糖鎖のピルビン酸付加に関与するPvg1/ピルビン酸転移酵素の特性解析を行うことができたこと(現在論文作成中)など本申請の主要な研究テーマについて多くの成果を得ることができており、本申請研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はピルビン酸転移酵素である分裂酵母Pvg1タンパク質の基質特異性を詳細に検討すること、そしてN-結合型糖鎖へ実際に本酵素を用いてピルビン酸を転移可能か実験を行う。もしヒト複合型糖鎖ヘピルビン酸を転移することができない場合には、Pvg1に点突然変異を生じさせ、変異Pvg1ライブラリーを作成し、転移可能な変異体の取得を試みる予定である。現在、並行してPvg1タンパク質の立体構造解析を進めているため、ランダムな変異だけでなく立体構造から酵素活性に重要なアミノ酸の同定を行い、その部分に変異を加えることも試みたいと考えている。
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