研究課題/領域番号 |
23380204
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹川 薫 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50197282)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 分裂酵母 / 凝集素 / ピルビン酸 / 糖鎖 |
研究概要 |
本申請は分裂酵母の糖鎖中に含まれるガラクトース残基の生合成およびガラクトース鎖の生理的機構、さらにガラクトースに付加するピルビン酸の生合成および役割について明らかにすることを目的としている。今年度は特に、ピルビン酸転移酵素の解析に関して多くの新知見を得ることができた。分裂酵母のピルビン酸付加に重要なピルビン酸転移酵素をコードするpvg1遺伝子を大腸菌で発現させ、組換えPvg1タンパク質を単一タンパクまで精製を行った。得られたPvg1タンパク質が実際にホスホエノールピルビン酸(PEP)を基質としてパラニトロフェニル(pNP)-α-ガラクトースへピルビン酸を付加することができることを、NMR等を用いて構造決定することにより同定した。また本酵素はpNP-ラクトースのガラクトース残基へもピルビン酸を転移できることがわかったが、グルコースやマンノースには転移できないことがわかり、Pvg1がα-結合のガラクトース特異的にピルビン酸を付加することを明らかにした。GFPとの融合タンパク質を作成して、分裂酵母におけるPvg1タンパク質の局在を調べたところ、Pvg1pはゴルジ体に局在することが明らかになった。そのため、Pvg1pの基質であるPEPは細胞質からゴルジ体内腔へと輸送されることが必要である。そこで植物のPEPトランスポーターと相同性の高い遺伝子を分裂酵母ゲノムから検索した結果、比較的高い相同性を示す2つの遺伝子が存在することがわかった。そこでこれらの破壊株を作成したところ、SPAC22F8.04遺伝子 (pet1+と命名)破壊株で、糖鎖へのピルビン酸付加量が極度に低下していることを見出した。Pet1タンパク質はゴルジ体に局在することから、本タンパク質が分裂酵母の細胞質からゴルジ体内腔へPEPを輸送する新規PEPトランスポーターであることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は分裂酵母のピルビン酸転移酵素に関する研究が大きく進展した。大腸菌で生産したPvg1タンパクを用いて実際にPvg1pがα結合ガラクトース特異的にピルビン酸転移活性を有していることを初めて明らかにすることができた。本成果は国際誌のFEBS Lettersに発表することができた。またPvg1pの点変異体を作成して酵素活性を測定したところ、活性に重要な複数のアミノ酸を同定することができた。さらに最近、我々はPvg1タンパク質のX線結晶構造解析を行い、本酵素の立体構造を明らかにした(論文作成中)。また本酵素の活性中心付近のアミノ酸を変異させることで、これまで転移が不可能であった新たな糖鎖にもピルビン酸を付加することができた(論文作成中)。今回取得できたPvg1変異体は、ピルビン酸含有糖鎖の合成に大変有用であり、今後さらなる多くの成果が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は今回取得できた新たな基質特異性を持つ、Pvg1変異体を用いてヒト複合型アスパラギン結合型糖鎖へピルビン酸の転移を試みたい。もしピルビン酸を非還元末端に持つ新しい複合型糖鎖が合成できた場合には、シアル酸含有複合型糖鎖との比較検討を試みたい。もしピルビン酸がシアル酸と同様な機能を果たすことがわかれば、エンドグリコシダーゼの糖鎖転移活性を利用して、ピルビン酸含有複合型糖鎖をタンパク質へ転移させてネオグリコプロテインを合成したい。合成したネオグリコプロテインが、どのような生理機能を果たすのかという問題にぜひ取り組みたい。
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