研究課題/領域番号 |
23390001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 美洋 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90226019)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 二酸化炭素固定 / α-アミノ酸 / シリルスタナン / シリルボラン / 二酸化炭素 |
研究概要 |
昨年度までの検討によって,イミン前駆体をビスメタル試薬であるシリルスタナン(Bu3SnSiMe3)とフッ化セシウム(CsF)存在下,10気圧の二酸化炭素(CO2)と反応させることによりα-アミノ酸誘導体が生成することを見出し報告した.本反応では,CsFがまず塩基としてイミン前駆体に作用し反応系内でイミンが生成した後,更にCsFがシリルスタナンを活性化し,スズアニオンが生成する.このスズアニオンがイミンに付加し,α-アミノスズ化合物が生成し,このα-アミノスズ化合物のスズ基を更にCsFが活性化しカルバニオン等価体が生成し,これとCO2が反応し,最終的にα-アミノ酸が生成していると考えられた.すなわち,本反応ではCsFが,塩基,ビスメタル化試薬の活性化,α-アミノスズ化合物の活性化,という3つの役割を果たし,一挙にワンポットで3段階の反応が進行していることになる.本反応機構が正しいならば,CO2非存在下で反応を行えば,中間体であるα-アミノスズ化合物が単離できる可能性がある.そこで,同様の条件下,CO2非存在下で反応を行なったところ,実際にα-アミノスズ化合物が高収率で得られ,新しいα-アミノスズ化合物の合成法として確立することができた.また,本CO2からのα-アミノ酸合成反応の欠点として,毒性の高いスズ化合物の使用が必須であることが挙げられる.この点を解決すべく,ビスメタル化試薬としてスズを含まないシリルボラン(PhMe2SiBpin)を用いたところ,反応はシリルスタナンを用いた場合よりも温和な条件下,収率良く進行することを見出し,スズ化合物の使用を回避するとともに,本反応を大きく改良することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標は,二酸化炭素の炭素資源としての有効利用を検討し,有用生物活性か某津への合成へと展開することである.申請者は,上述の通り二酸化炭素を利用したα-アミノ酸合成法の開発に成功し,またその欠点の克服にも成功しているため,概ね順調に進展していると言える.一方,生体内で利用されるα-アミノ酸は光学活性体であるため,今後光学活性体としての合成を達成するために,不斉合成法の開発が必要であるため,検討していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
申請者は,上述の通り二酸化炭素を利用したα-アミノ酸合成法の開発に成功したが,生体内で利用されるα-アミノ酸は光学活性体であるため,今後不斉合成法の開発が必要である.これを実現する方策として,1)反応中間体であるα-アミノメタル種を光学活性体として合成する方法の開発,2)上の1)で合成した光学活性α-アミノメタル種とCO2との反応における不斉転写反応の確立,の二つの検討が必要である.よって,これらの研究を進めていく.また,CO2の反応性として上述の「求電子性」の他に,「炭素―酸素二重結合性」があり,これを遷移金属で活性化することで進行する反応の検討も本研究課題の目標であり,これに関しても,現在ニッケル触媒を用いたイナミドとCO2との反応によるβ-アミノアクリル酸誘導体の合成法の開発も進めている.このβ-アミノアクリル酸誘導体は,不斉水素化反応によりβ-アミノ酸誘導体へと変換できるため,この反応に関しても検討していく.
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