研究概要 |
本年度は前年度に成功したフェノールのパラ位に適当な長さの炭素鎖のアリルカーボネートを持つ基質のipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応から得られる[5,4]スピロシクロヘキサジェノンのスカンジウム触媒を用いる転位反応によるテトラリン誘導体の合成を行った。また、アリルカーボネートの代わりにプロパルギルカーボネートを持つ基質のパラジウム触媒ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応を試みた。反応は予想される5員環部にアレンを有する[5,4]スピロシクロヘキサジェノンではなく[5,5]スピロシクロヘキサジェノンを与えた。反応解析の結果、予想される[5,4]スピロシクロヘキサジェノンが中間体となり、さらに反応が進行した新規反応であることが判明した。ビフェニル型の基質、一方の芳香具にアリルカーボネート、他方がフェノールである基質を用いる分子内ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応を検討し、9,10一ジヒドロフェナントレン類が得られる新規反応を開発し、これの応用として天然物セドレリンAとパラリコリンBの不斉合成を行った。フェノールのパラ位にアレンを持つ基質を用いて、Mjzorogi-Heck反応―分子内ipso-Friedel-Craft型アリル位置換反応の連続反応の開拓にも成功した。フェノールのパラ位にアルキンを持つ基質の金触媒を用いる分子内ipso-Friedel-Craft型アルキル化反応の開発にも成功した。 これまでの反応は遷移金属触媒を用いるものであるが、酸触媒を用いる分子内ipso-Friedel-Craft型アルキル化反応も検討し、ベンジル位にアルコールを有する基質から連続反応経由で多環状ヘテロ環化合物が効率よくできる新規反応の開拓にも成功した。この反応は基質の構造を工夫することで種々の多環式ヘテロ環化合物が得られる。
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