研究課題/領域番号 |
23390004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20227060)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | perophoramidine / caprazamycin B / アミジン / ハロゲンーリチウム交換反応 / アルドール反応 / ジヒドロジアゼピノン / ヒドロアミド化反応 / 2置換アミノ酸 |
研究概要 |
前年度の結果を踏まえてperophoramidine の全合成研究について、アミジン窒素上の保護基を種々選択できる第3の合成ルートを検討した。具体的には、カルボジイミドと不飽和ラクタムの分子内電子環状反応を利用して2位にアミノ基を有する3環性キノリンへと変換後、その2位アミノ基を種々の置換基により保護することで目的の閉環前駆体を予定通り合成した。次に鍵反応である脱芳香化を伴った還元的分子内閉環反応について精査した結果、tert-BuLiあるいはN-BuLiによるハロゲンーリチウム交換反応に附すことで、高収率かつ立体選択的に環化体を得ることに成功した。これにより重要中間体の合成ルートの短行程化を達成した。 Caprazamycin B の全合成研究に関しては、すでに側鎖部分の不斉合成に成功したので、今年度は天然物の下部caprazolの不斉合成について検討した。昨年度確立したモデル化合物の合成ルートに従い、D-グルコースから6工程で合成可能な光学活性アルデヒドを出発原料に用いて、グリシン誘導体とのジアステレオ選択的なアルドール反応を種々検討した結果、2-アミノマロン酸エステル誘導体を求核剤に用いることで、改善の余地はあるものの所望の立体異性体が主生成物(5:1)として得られることを見出した。また、次のジヒドロジアゼピノン環の構築では、アルキル側鎖を有するアミドアルキンに対して当分野で開発した金属触媒分子内ヒドロアミド化反応を適用したところ、残念ながら位置選択性が低下するため有効ではないことが判明した。そこで、現在2つの別ルート(逆合成切断箇所を変更し、末端オレフィンへの分子内アミノヒドロキシ化あるいはキラルなヒドロキシハライドへのアミノ基の分子内求核置換反応)を計画し、その原料合成を確立する段階に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Perophoramidine の全合成研究については、ほぼ予定通りに研究を進めることができ、(1)アミジン窒素上に種々の保護基を有する合成中間体の効率的な合成ルートの確立、(2)鍵反応である脱芳香化を伴った還元的分子内閉環反応を開発した。これにより窒素上にPMB基を有する五環性化合物の高収率かつ立体選択的な合成に成功した。最後のピロリジン環の構築については現在検討中である。 Caprazamycin B の全合成研究に関しては、これまでの最大の課題であった光学活性アルデヒドとグリシン誘導体とのジアステレオ選択的なアルドール反応のジアステレを選択性が悪く、所望の立体異性体を主生生物として得ることができていなかったが、種々検討した結果、2-アミノマロン酸エステル誘導体を求核剤に用いることで、その点を大幅に改善することができた。これにより原料の大量合成がスムーズに行えることになった。しかし、次のジヒドロジアゼピノン環の構築では新たな課題が見つかったが、問題解決に向けて必要となる基質の合成法は確立することができたので、早急にこの課題についても検討できる段階に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
perophoramidine の全合成研究については、これまでに確立したルートの大幅な変更は必要ないと考えている。残る課題として(1)もう1つの4級炭素の導入とピロリジン環の構築、(2)芳香環上に存在する1つのブロム基と2つのクロル基をどの段階で導入すべきか、(3)最後のアミジン窒素保護基の脱保護について順次検討し、次年度中に全合成を達成する予定である。 Caprazamycin B の全合成研究に関しては、原料合成のスケールアップが可能となったので、残る七員環構築が1つの山場になると考えている。ここまでのルートが確立すれば合成ルートはほぼ確立できると考えている。あとは、側鎖フラグメントであるアミノ糖と脂肪酸ユニットを導入することで全合成を次年度中に完了させる予定である。
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