研究課題/領域番号 |
23390005
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤岡 弘道 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10173410)
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キーワード | アセタール / 分子内ハロエーテル化 / キラルカチオン中間体 / カチオン性塩 / 脱保護 / メチレンアセタール |
研究概要 |
1)アセタールの分子内ハロエーテル化により生成するキラルカチオン中間体を経る反応 1-1 光学活性ジオールを不斉補助基として利用:Lycopodium アルカロイド類の不斉合成:シクロヘキサジエンアセタールの分子内ハロエーテル化反応で得られる化合物をシントンとして用い,4 環性骨格を有するclavolonine およびlycopodine の短工程不斉合成に成功した。 1-2 鎖状ジエンジオールアセトナイドの利用:含bis-THFアセトゲニンの不斉合成:独自に開発したbis-THF骨格の簡便構築法を鍵反応として,アセトゲニンの効率的な不斉合成を検討し,いくつかのアセトゲニンの形式合成に成功した.またその過程で、bis-THF骨格の合成に関連して、末端ヨウ素原子を定量的に水酸基に変換できる手法を開発した。 2)アセタールのR3SiOTf-塩基処理により生成するカチオン性塩を経る反応 2-1 脱保護法の更なる展開:既にアセタール,THP-エーテル,MOM-エーテル,メチレンアセタールの独創的脱保護に成功しているが,今年度はさらにMEM-エーテル, BOM-エーテル, アセトナイド,アルキリデンアセタール等での緩和な脱保護条件を確立した.2-2 他の保護基への直接変換(革新的脱保護法の開発):合成途中での保護基の変換は天然物合成等で重要である.申請者は,メチレンアセタールから位置選択的にカチオン性塩中間体を生成し,この中間体で求核種置換反応を行い,メチレンアセタールから一工程での他の保護基への直接変換反応を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、1)アセタールの分子内ハロエーテル化により生成するキラルカチオン中間体を経る反応,2)アセタールのR3SiOTf-塩基処理により生成するカチオン性塩を経る反応、を行っているが、実施計画はほぼ計画通りに推進できた。さらに従来、良い方法がなかったTHF環側鎖末端ヨウ素原子を定量的に水酸基に変換できる手法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
1)アセタールの分子内ハロエーテル化により生成するキラルカチオン中間体を経る反応:鎖状ジエンジオールアセトナイドの利用による含bis-THFアセトゲニンの不斉合成:アセトゲニン類は広い抗腫瘍活性を有する天然物であり,数多くの化合物が知られている.申請者は,独自に開発したキラルカチオン中間体を経るbis-THF骨格の簡便構築法を鍵反応として,今年度の研究で数種のアセトゲニン類の効率的な形式不斉合成に成功した.申請者の手法では同一のジオールから基質となるアセタールの種類を変えるだけで異なる立体を有するbis-THFを立体選択的に合成できる.そこで,今後はさらに研究を進め,他のアセトゲニン類の不斉合成を行う. 2)アセタールのR3SiOTf-塩基処理により生成するカチオン性塩を経る反応 2-1.申請者は昨年度の本研究で,MOM基やメチレンアセタール基から生成するカチオン性塩へ,種々のアルコール(MeOH, BnOH, TMSCH2CH2OH)を求核置換させ,出発基質から一工程での他の保護基への直接変換に成功した.そこで本年度は炭素求核種の導入を検討し,多くの医薬品や天然物中に見られるエーテル構造の効率的な合成法を開発する.2-2.混合アセタールから選択的にカチオン性塩を生成することに成功しているので、このものの還元反応による水素置換反応を行い,エーテル構造の効率的な合成法を開発する.2-3. 糖アノマー位への立体選択的求核種導入反応は様々な手法が開発されているが,殆どが2位官能基(アセタート等)の隣接基関与を利用している.申請者らは2‐デオキシリボースから様々なカチオン性塩中間体を発生させることに成功しているので,これらを用い核酸塩基を含めた種々の求核種の導入を検討する.さらに6単糖でも検討し,2‐デオキシ糖への求核種の立体選択的導入手法として開発する.
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