研究課題/領域番号 |
23390006
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
落合 正仁 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50127065)
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キーワード | Baeyer-Villinger酸化 / 臭素 / 超原子価 / エステル / アルデヒド / 転位 / 置換基効果 / 脱離基 |
研究概要 |
1、三価の超原子価臭素反応剤の合成:三価の超原子価臭素化合物として、Frohn教授らと共に開発したジフルオロブロマンを使用した。BrF3にArSiMe3を作用させて臭素原子上での配位子交換を実施し、ジフルオロブロマンを大量に合成することに成功した。プロマンは室温でも一ヶ月以上保存可能であり、取り扱いが容易な化合物であるある。p-CF3基を水素に変えたジフルオロブロマンの合成も実施した。 2、脂肪族一級アルデヒドのデカナールのBV酸化反応:デカナールにジフルオロブロマンを作用させると、フッ化アシルが73%の収率で生成した。反応系中で放出されたHFがアルデヒドに付加してα-フルオロヒドリンを生成した後、配位子交換によりアルコキシブロマンが生成し、最後に三価の臭素置換基の還元的脱離に伴ってα位水素が引き抜かれ、フッ化アシルが得られたと思われる。このフッ化アシルへの酸化反応において、更に反応系に水(2当量)を添加して反応を行うと、反応経路が劇的に変化し、BV酸化が主として進行した。即ち、ギ酸エステルが88%の収率で得られた。本反応は、脂肪族一級アルデヒドのBV酸化の世界で初めての反応例である。なお、m-CPBAによるデカナールの酸化では専らカルボン酸が生成し、BV酸化は全く進行しない。添加する水の量について詳細に検討した結果、2当量が最適であった。 3、アルキル基の置換基効果の検討:BV酸化によるギ酸エステルの生成とβ脱離によるカルボン酸の生成比は、アルキル基の転位能が支配していると予測される。そこで、脂肪族アルデヒドのアルキル基をMe基から、Et,…n-nonyl基へと連続的に変化させ、ギ酸エステルとカルボン酸の生成比を求め、置換基効果を調べた。Winnikらはケトンの古典的BV酸化におけるアルキル基の転位能を数値化し、評価している。本研究で得られたアルキル基の相対的転位能はWinnikらの結果と良い一致を示した。2級アルキル基の転位能はかなり高くなることが知られており、2級アルデヒドのBV酸化についても調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の計画(1、三価の超原子価臭素反応剤の合成;2、脂肪族一級アルデヒドのデカナールのBaeyer-Villiger酸化反応;3、アルキル基の置換基効果の検討)に従って研究を実施したところ、これまでに前例の全くない脂肪族一級アルデヒドのデカナールのBaeyer-Villiger酸化反応の開発に成功するなど、予想以上の成果が得られた。Baeyer-Villiger酸化の新戦略を提案するための基礎作りができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアルデヒドだけでなくケトンのBaeyer-Villiger酸化も進行することをシクロヘキサノンとの反応を実施して、証明する予定である。2-メチルシクロヘキサノンとの反応では、古典的Baeyer-Villiger酸化と同様に、メチン基の転位がメチレン基の転位よりも圧倒的に優先することを確認したい。 研究計画に変更はなく、これまでに前例の全くない単純芳香族アルデヒドのBaeyer-Villiger酸化反応の開発や酸化反応における立体化学の検討(光学活性な2級アルデヒドを合成し、得られるギ酸エステルを炭酸塩と処理してアルコールに変換し、その絶対配置と光学純度を決定する。我々のBaeyer-Villiger酸化が立体保持で進行することを証明する。)を実施する。また、分子軌道計算(DFT法及びMP2法)も実施して、反応機構の検証も行う予定である。
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