研究課題
本研究では、poly(ethylene glycol)-poly(L-lysine) (PEG-PLL)ブロック共重合体とsiRNAによって形成される一分子siRNAキャリア(PICナノキャリア)を構築し、がんなどの疾患治療に応用することを目指している。2年目となる本年度は、異なるPEG分子量とPLL鎖長を有するPEG-PLLから形成される一分子siRNAキャリアのポリアニオン(ヘパリン)との置き換わり反応に対する安定性を評価した。その結果、PEG分子量が大きく(分子量42,000)、PLLの重合度が最も小さい(20量体)siRNAキャリアが最も高い安定性を示すことが明らかになった。この結果は、荷電性高分子の分子量が大きくなるほどより安定となる通常のポリイオンコンプレックスでは見られない現象であり、PLLが短いほどPEGの密度が増大する一分子siRNAキャリアに特徴的なものであると考えられる。次に、前年度までに(PEG)2-PLLから形成される一分子siRNAキャリアが優れた血中滞留性を示し、ヒト腎がんモデル(OS-RC2細胞)に効果的に集積することが確認されたために、本年度は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と分裂期キナーゼPolo-like kinase I(Plk-1)を標的としたsiRNAを用いてOS-RC2の固形がんに対する治療効果を検討した。その結果、一分子siRNAキャリアは有意な制がん活性を示すことが確認された。リガンド分子の導入に関しては、環状RGDペプチドを搭載したPEG-PLLの合成に成功しているが、現在、多価リガンドにするための合成法の検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
「研究目的」に従って、1分子siRNAキャリアのポリアニオンによる置き換わり反応に対する安定性評価を実施し、本システムに特徴的な物性を明らかにすることができた。さらに前年度までに優れた血中滞留性が確認されたsiRNAキャリアを用いて固形がんモデルを治療することに成功した。
本年度の研究により、優れた血中滞留性を示し、固形がんに対して有意な制がん活性を示す1分子siRNAキャリアの構造を明らかにすることができた為、今後は、1分子siRNAキャリアが優れた血中滞留性を示すメカニズムをFRETなどを利用して明からにしていく。さらに、1分子siRNAキャリアの安全性を全身投与後の血漿中の生理学的パラメーターの測定などによって明らかにする。
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