研究課題
本研究では、poly(ethylene glycol)-poly(L-lysine) (PEG-PLL)ブロック共重合体とsiRNAによって形成される一分子siRNAキャリア(PICナノキャリア)を構築し、がんなどの疾患治療に応用することを目指している。3年目となる本年度は、2種類の蛍光色素で標識されたsiRNAを用いて、マウスの血中での蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の効率を生体リアルタイム共焦点顕微鏡により評価したところ、前年度に長期血中滞留性が確認された(PEG)2-PLLから形成される一分子siRNAキャリアによって血中におけるsiRNAのRNaseによる分解が有意に抑制されることが確認された。また、一分子siRNAキャリアの血中滞留性に関して、ブロック共重合体の組成と混合比の最適比(N/P比)の検討を行ったところ、PEGの分子量が37,000、PLL重合度が20の(PEG)2-PLLでN/P比が10の場合に最も高い血中滞留性が得られることが確認された。この一分子siRNAキャリアを用いてヒト膵臓がんモデルに対するPolo-like kinase 1(Plk1)を標的とするsiRNAの治療効果を検討したところ、有意な治療効果が確認された。さらに、一分子siRNAキャリアの全身投与後の生理学的パラメーター(BUN、クレアチニン、GOT、GPT、ALP等)を評価したところ、すべてのパラメーターに異常値は認められず、一分子siRNAキャリアの高い安全性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
「研究目的」に従って、一分子siRNAキャリアのin vivo応用のための構造最適化を行い、疾患モデルに対する優れた治療効果と安全性を確認することができた。また、一分子siRNAキャリアのin vivo挙動を生体リアルタイム共焦点顕微鏡によって明らかにすることができた。
最終年度となる4年目においては、一分子siRNAキャリアの固形がんへの集積を含む体内分布を評価し、さらに治療抵抗性がん等の難治がんモデルの分子治療へと展開することによって、一分子siRNAキャリアのがん治療における有用性を明らかにする。また、一分子siRNAキャリアの腎疾患治療への展開に関しては、腎障害合併高血圧モデルに対して、一分子siRNAキャリアを用いてチロシン水素化酵素標的siRNAを腎糸球体選択的に作用させた時の治療効果を検討する。さらに、リガンド分子を搭載した一分子siRNAキャリアに関しても機能評価を加速する。
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