研究課題/領域番号 |
23390011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇野 公之 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (00183020)
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研究分担者 |
青山 浩 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (60291910)
山下 沢 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (70398246)
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キーワード | シトクロムP450 / 薬物代謝 / 一塩基多型 / 共鳴ラマン分光 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
シトクロムP450(CYP)は薬物代謝の中心的役割を演じる重要な酵素であり、5種のヒト肝CYPによって市販薬物の90%以上が代謝される。CYPは本来膜タンパク質であるが、申請者は活性を保持したまま可溶性タンパク質として5種のCYPすべてを大量発現させることに成功し、薬物代謝機構を詳細に検討するための研究基盤を確立している。そこで本研究では、5種のCYPが共存することによって薬物代謝がどのように変化するかを調べ、CYP同士の協同と競合の機構について明らかにする。 23年度は、代謝の連鎖が起こることが強く期待される薬物としてアミトリプチリンを用い、本薬物の代謝に関わると考えられているCYP1A2、2C19、2D6との結合性について評価した。CO結合型CYPの共鳴ラマンスペクトルを測定したところ、2D6では1A2と2C19に比べてFe-CO伸縮振動がアミトリプチリンの結合によって大きく高波数シフトしたことから、基質結合ポケット内での薬物の配向性が大きく異なることが示唆され、各CYP分子種による代謝部位の違いを反映していると考えられた。また、薬物代謝活性を測定した結果、三級アミンをもつアミトリプチリン、イミプラミンと比較して、これらの代謝産物であり二級アミンをもつノルトリプチリン、デシプラミンの薬物代謝活性が低下していることが判明した。これらの結果と薬物結合性との相関を調べた結果、代謝活性低下の原因は、二級アミンのヘム鉄への配位や、代謝部位とヘム鉄との距離に由来することが明らかとなった。以上の結果から、中間代謝産物は構造的に類似している親化合物と同じ挙動を示すわけではないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、代謝カスケードを示す薬物を取り上げて代謝活性と薬物結合性について評価できた。その結果、中間代謝産物と親化合物との挙動の違いについて明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は対象薬物を拡大し、同様の手法によって活性と構造の関係について検討を進めていく。また、微結晶ながらCYPの結晶が得られているので、さらに結晶化条件を検討してX線を用いた構造解析を進めていきたい。
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