研究課題/領域番号 |
23390011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇野 公之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00183020)
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研究分担者 |
青山 浩 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60291910)
山下 沢 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70398246)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | シトクロムP450 / 薬物代謝 / 一塩基多型 / 共鳴ラマン分光 |
研究概要 |
シトクロムP450(CYP)は薬物代謝の中心的役割を演じる重要な酵素であり、5種のヒト肝CYPによって市販薬物の90%以上が代謝される。CYPは本来膜タンパク質であるが、申請者は活性を保持したまま可溶性タンパク質として5種のCYPすべてを大量発現させることに成功し、薬物代謝機構を詳細に検討するための研究基盤を確立している。そこで本研究では、5種のCYPが共存することによって薬物代謝がどのように変化するかを調べ、CYP同士の協同と競合の機構について明らかにする。 24年度は、市販薬物の約半数の代謝に関わり、複雑な薬物間相互作用を引き起こすことが知られているCYP3A4を中心に、各種薬物との結合性について調べた。代表的な基質であるアセトアミノフェンやカフェインを用いて検討した結果、これら薬物は多段階の結合過程を示すことがわかった。一方、相対的に大きな基質であるジルチアゼムやエリスロマイシンを用いて調べたところ、これらでは1段階の結合過程しか認められなかった。このことは、CYP3A4が大きな基質結合ポケットを有していることに起因すると考えられ、本酵素の基質多様性の一因になっていると思われた。 さらに、基質結合にともなう活性部位ヘムの構造変化について紫外可視吸収スペクトルにより検討した結果、アセトアミノフェンでは2つの結合過程でともに強い軸配位子がヘム鉄に配位している様子が認められた。このような構造は、薬物の窒素原子が直接ヘム鉄に配位した結果によると報告されているが、窒素原子を含まないアセトアミノフェンの誘導体でも同様の変化が観測された。したがって、強い配位子は必ずしも窒素原子である必要はなく、おそらく水素結合を介して水分子がヘム鉄に強く配位したためであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、CYPの複雑な代謝過程を解明するため、特に重要なCYP3A4を用いて複数の薬物に対する結合性について評価できた。その結果、薬物結合過程を追跡する手法を確立でき、さらには薬物結合にともなう新規な活性中心構造を提案することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は対象薬物及びCYPの種類を拡大し、同様の手法によって活性と構造の関係について検討を進めていく。25年度は最終年度となるため、これまでの知見をまとめ、論文を作成していきたい。
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