研究課題/領域番号 |
23390014
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小暮 健太朗 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70262540)
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研究分担者 |
土谷 博之 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (00403402)
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (60438041)
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キーワード | ナノDDS / 癌微小環境 / siRNA / 癌細胞間隙 / 癌治療 |
研究概要 |
平成23年度は、ナノDDSの基礎構造であるリポソームを基本とし、これらの機能性を搭載した各機能性リポソームの構築を目指した。(1)微小環境に感応する表面電荷反転型リポソームの構築:pH6.5程度でプロトン化されるように塩基性アミノ酸のpKaが上昇するようなアミノ酸配列を設計し、高感度pH感応性ペプチドを構築した(配列は特許の関係で割愛)。設計・委託合成したペプチドを表面に修飾したリポソームは、pH7.4では負電荷を示すが、pH6.5にすることで電荷が正に反転することを確認した。さらに、細胞への取り込みをFACS解析および共焦点レーザー顕微鏡観察によって評価したところ、pH7.4ではほとんど細胞に取り込まれなかったが、pH6.5以下の条件において顕著に取り込まれることが明らかになった。(2)癌間質分解能を有するリポソームの構築:ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)をナノ粒子表面に化学修飾し、癌間質分解能を有するナノ粒子の構築を目指した。ヒアルロニダーゼをPEG脂質先端に化学修飾した脂質を合成し、ナノ粒子脂質膜に挿入することで表面をヒアルロニダーゼ修飾した。得られたナノ粒子を癌細胞スフェロイドに添加したところ、スフェロイド内部まで広く分布することが確認され、ナノ粒子表面のヒアルロニダーゼによって間質を分解して細胞塊内部まで侵入可能であることを確認した。(3)狭小空間に侵入可能なワームライクナノ構造体の構築:研究代表者が見出した、柔軟で細い構造を有する合成高分子カチオン(ポリLリジン)とsiRNAの複合体調製し「芯」として脂質膜コーティングすることにより、柔軟性のあるナノ構造体を構築した。癌細胞スフェロイドへの侵入能について、得られたナノ構造体は既存のトランスフェクション試薬複合体と比較したところ、ナノ構造体はより多くスフェロイド内部に存在することが確認された。以上のことから、平成23年度に計画していた各機能性リポソームの構築を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、各種機能性リポソームの構築に成功したことと、主に癌細胞スフェロイドへの侵入活性となるが、期待した機能性を各機能性リポソームが有していることが明らかになったため。一部、実施できなかった評価系もあるが、各機能性リポソームの機能性評価は達成されていることから、「(2)おおむね順調に進展している。」が最も妥当な区分だと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、平成23年度に構築した各種機能性リポソームの機能評価を推進するとともに、得られた知見に基づいて、各種機能性リポソームの問題点を明らかにし、構築方法および素材等にフィードバックすることでリポソームの最適化を図る。
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