研究課題/領域番号 |
23390014
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小暮 健太朗 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70262540)
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研究分担者 |
土谷 博之 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (00403402)
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (60438041)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノDDS / 癌微小環境 / siRNA / 癌細胞間隙 / 癌治療 |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年度の成果に基づき、各機能性リポソームにsiRNA等の評価用薬剤を封入した機能性ナノDDSについて、in vitroおよびin vivoにおける機能評価を行った。①蛍光標識した表面電荷反転型リポソームを用い、異なるpHにおける細胞内動態を評価することで、癌微小環境に感応する表面電荷反転型リポソームの機能性を評価した。その結果、当該リポソームは効率よくエンドソームを脱出可能であり、興味深いことに細胞表面から膜融合によっても細胞内に侵入可能であることが示唆された。さらに、トレーサーDNAを封入した機能性リポソームを担癌マウスに尾静脈投与したところ、コントロールである従来のPEGリポソームと同程度の腫瘍集積性を示すことが明らかとなった。さらに、腫瘍組織内分布を検討したところ、従来のPEGリポソームは血管周辺に局在しているのに対して、機能性リポソームは血管から離れた低pH領域に局在していることが明らかとなった。②ワームライクナノ構造体の機能評価を進めたところ、最初のsiRNA芯構造の構築段階で、弱い凝集が起こっており、そのために柔軟な構造を有する物ができにくくなっている可能性が示唆されたため、芯構造の構築方法の改良を行った。これまでの分子量の大きいポリLリジンではなく、分子量の小さいポリLリジンをポリカチオンとして選択し、siRNAと混合することで、新しい芯構造の構築を試みたところ、低いN/P比において、ポリアクリルアミドゲル中を泳動可能な芯構造体の構築に成功した。これも用いて、脂質膜コートを行い、それまでのワームライクナノ構造体と、スフェロイドへの浸透能について比較したところ、従来のワームライクナノ構造体よりも、高いスフェロイド浸透活性を示した。このことから、芯構造の物性が構造体全体の柔軟性に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌微小環境に感応する表面電荷反転型リポソームに関しては、平成24年度にin vivoにおける腫瘍への送達能および腫瘍内動態評価を行うことができていることから、当初計画よりも若干早い進捗である。従来から広く用いられているPEGリポソームとの比較より、腫瘍への送達率について当該リポソームとPEGリポソームでほぼ同程度であったことから、当該リポソームに関する達成度は計画の6割強程度であると考えている。また、ワームライクナノ構造体に関しては、ECM(ヒアルロン酸)の分解酵素を修飾し、高い柔軟性を有する構造体を構築できているが、siRNA/ポリLリジンとの芯構造に問題があり、改良に取り組んでいいたため、若干進捗が遅くなってしまったとともに、細胞間隙開裂ペプチドで修飾したナノ構造体の構築も遅れてしまっているが、達成度としては計画の半分以上はあると自負している。統合型ワームライクDDSの構築に関しては、ワームライクナノ構造体の問題点解決の可能性が示唆されたとともに、癌微小環境応答型リポソームに関しては、計画よりも早い進捗であり、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、今後も当初計画に従い、各機能性リポソームの機能性をin vitroおよびin vivoで評価した後、機能性を統合したワームライクDDSを構築し、in vivo腫瘍内動態および送達効率等を従来キャリアーと比較することで、ワームライクDDSの完成を目指す。さらに、当初計画通りに、完成したワームライクDDSの機能性を抗腫瘍効果を指標として評価することを目指す。
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