平成25年度は、平成24年度の成果に基づき、各機能性リポソームのin vitroおよびin vivoにおける機能評価を行うとともに、統合化を目指し検討を行った。ワームライクナノ構造体をメラノーマ担癌マウスに局所投与し、in vivoにおける腫瘍内動態を評価したところ、in vitroでの検討から予想されたほどの腫瘍内浸透性を示さなかったため、再度in vitroスフェロイド系を用いて、組織浸透性のさらなる向上を検討した。細胞間相互作用を減弱させるため、当初提案していた細胞間隙開裂活性を有するAT1002ペプチドをワームライクナノ構造体表面に修飾し、浸透性を評価した。AT1002ペプチド修飾により若干細胞間隙への浸透性が改善されたようにも思われたが、ワームライクナノ構造体同士の凝集が起こってしまうことで浸透が阻害されていることが推察された。そこで、ポリエチレングリコール(PEG)を同時に表面修飾することで、ナノ構造体同士の相互作用を軽減する工夫をした。その結果、AT1002/PEG両修飾ワームライクナノ構造体は、ペプチド未修飾ナノ構造体やAT1002単独修飾ナノ構造体、PEG単独修飾ナノ構造体に比べて、著しく高いスフェロイド内浸透性を示した。他方、平成24年度の成果において、癌微小環境に感応する表面電荷反転型リポソームの腫瘍内動態観察の結果、血管から離れた腫瘍内奥に浸透することが明らかとなっていたが、スフェロイドを用いた詳細な解析により、表面電荷反転型リポソームが細胞と相互作用することで、細胞内骨格が変化し、細胞間隙が開いている可能性が見出された。このことは、表面電荷反転能を付与するためにリポソーム表面に修飾した機能素子がAT1002と同様の機能性を有することを示唆するものである。これらの機能性リポソームの統合化を試み、in vivoにおける機能性評価の検討に着手した。
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