研究課題
アルツハイマー病(AD)の有力な発症原因物質βアミロイド(Aβ)は前駆体タンパク質APPが2回の連続的切断を受けて生成する。毒性の強いAβが生成・分泌される仕組みを解明する事は、ADの根本治療法を開発する上で不可欠である。本研究では、APPがJIP1を介してキネシン-1の軽鎖(KLC)に結合する分子機構を解明し、APPとモーター分子の結合解離を制御している制御機構の解明に取り組んだ。H23年度は、APPと競合的に同じモーターに結合するアルカデインの結合様式を詳細に解析した。その結果、APPと異なり、短いペプチド領域がkinesinn軽鎖に結合し、キネシンー1モーターを活性化している事を明らかにした。AD脳では、神経細胞内の輸送障害が神経毒性を示すか事が指摘されており、アルカデインとAPPの輸送のバランスの重要性が示唆された。また、孤発性アルツハイマー病(SAD)の発症機構は多様であると考えられるが、SAD患者のCSF中のp3-Alcを測定したところ、γセクレターゼの触媒ユニットであるPSの遺伝子変異が無いにも関わらず、基質であるアルカデインのγ切断産物p3-Alcの切断が変化している事が明らかになった、このことは、SAD発症機構として、γ切断の異常があることが考えられた。p3-Alcをより非侵襲的に測定する目的で血液測定法を開発した。本方法はまだprimitiveであるため、γ切断の変化を捉える事はできないが血中送料を測定する事に成功した。複数コホートの患者血液のp3-Alcを測定したところ、AD患者で有意に高い結果を得た。このことは、SAD患者では、γセクレターゼの切断に質的もしくは量的な変化を与える異常が生じている可能性を示唆し、新たな治療薬・診断薬の開発に貢献した。H24年度以降、どのような生体内変化がγ切断に影響を与えるのかを解析してゆく。
2: おおむね順調に進展している
孤発性ADの新たな発症原因を提唱出来る成果を得て、診断法に役立てることが可能なp3-Alcの測定法を開発し、血液検査への道を拓いた。来年度に予定している発症原因の分子機構を解明できる道筋を開いた。TOP Journalへの掲載は出来なかったが、Annals of Neurology等のIFが10以上の雑誌に論文を掲載した。
基礎研究と臨床研究を同時に進めることで、理論的にしっかりした疾患解析をより一層進める予定である。
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