研究課題/領域番号 |
23390017
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 利治 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80179233)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経変性疾患 / 老化 / βアミロイド / APP |
研究概要 |
孤発性アルツハイマー病(AD)は、膜タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)が二回の連続的切断を受けて生成するAβの可溶性オリゴマーが神経毒性を示し発症する。従ってAβが生成・分泌される仕組みを解明する事は、ADの根本治療法を開発する上で不可欠である。本研究では、APPがJIP1を介してキネシン-1の軽鎖(KLC)に結合する制御機構の解明に取り組んだ。キネシン-1によるAPP順行輸送の停滞は、Aβの生成増を引き起こす事が知られている。H24年度は、APPがJIP1bを介してキネシン-1の軽鎖(KLC)に結合する制御機構を解析した。その結果、APP-JIP1b-KLCの結合はAPP-JIP1b間ではなく、JIP1b-KLC間で制御されていることを明らかにした。JIP1bとKLCの相互作用は、これまで報告されてきたよりも複雑である事を明らかにし、新たな相互作用領域を同定した。相互作用にはタンパク質リン酸化が関わっており、H25はリン酸化サイトの同定を行う予定である。 昨年度までに、孤発性アルツハイマー病(SAD) 患者のCSF中のp3-Alcを測定したところ、プレセニリン遺伝子変異が無いにも関わらず、基質であるアルカデインのγ切断産物p3-Alcの切断が変化している事を明らかにし、SAD発症機構としてγ切断の異常を提唱してきた。Alcのうちp3-Alcαは分子種を選別定量するsELISA系の確立が難しく、提唱仮説の検証が難しかった。しかしながら、p3-Alcβは、2つの主要分子種p3-Alcβ37およびp3-Alcβ40を定量する方法が確立できた。予備的な解析では、老化およびAD患者で髄液(CSF)中のp3-Alcβに変動が認められた。H25年度は、どのような条件でp3-Alcβの変動が起こるのか解析を進めSADの発症機構の解明を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
孤発性ADの新たな発症原因を提唱出来る成果を得て、研究を継続している。p3-Alcβの分子種別定量法を確立し、来年度に発症原因の分子機構を解明できる道筋を開いた。また、KLCとJIP1bの結合制御領域の詳細を決定中であり、来年度中に決定できると考えられる。初年度にAnnals of Neurology(IF12)に論文を掲載した。今年度の成果は、TOP Journalへ向けて投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究と臨床研究を同時に進めることで、理論的にしっかりした疾患解析を進めてきたが、傾向を把握出来たので、基礎研究に重点を移し発症分子機構の解明を目指す。
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