研究課題/領域番号 |
23390020
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
今泉 祐治 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (60117794)
|
研究分担者 |
大矢 進 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70275147)
山村 寿男 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80398362)
|
研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
キーワード | 薬理 / イオンチャネル / 非興奮性細胞 / カルシウム活性化カリウムチャネル / 細胞内カルシウム動態 / 正帰還カルシウム制御機構 / 発現調節 |
研究概要 |
多くの非興奮性細胞(内皮細胞, 軟骨細胞, Tリンパ球, 上皮細胞など)において、刺激応答の初段階となる細胞内Ca2+濃度上昇([Ca2+]i)を正帰還的に制御する機構が普遍的に存在し、Ca2+活性化K+ (KCa)チャネルがその正帰還Ca2+制御機構の中心的役割を担う分子として機能するスキームを実証するために以下の実験を行い、成果を得た。 (1) アレルギー性接触性皮膚炎モデルマウスを用いて、Tリンパ球の活性化で生じる疾患病態において、KCaチャネルの内の中コンダクタンスIKチャネルの発現変化と、IKチャネルのドミナントネガティブスプライスバリアントの正常IKチャネルに対する割合の変化を、明らかにした。さらにこの疾患モデルにおいては、IKチャネル拮抗薬TRAM34の大きな治療効果を認めた。また前立腺肥大症モデルマウスおよび前立腺癌摘出手術でのヒト肥大前立腺組織においてIKチャネルの発現増加、モデルマウスではTRAM34が肥大抑制効果を発見。 (2) 脳血管内皮細胞と軟骨細胞において正帰還Ca2+制御機構における主要なCa2+流入経路(Ca2+透過チャネル)として、特にストア作動性Ca2+流入に関してはOrai & Stim が主な分子実体として機能していることを明らかにした。そしてその分子動態と分子間相互作用を一分子可視化により解明した。特に軟骨細胞においてはOrai1とともにOrai2の発現が高く、Orai2をSiRNAでノックダウンさせた時に、ストア作動性Ca2+流入がむしろ増加することを発見した。一方、全反射顕微鏡と各種蛍光蛋白ラベルを用いた一分子可視化法は、BKチャネルαサブユニットの4量体形成を解析する過程で確立させ、FRET法や帆とブリーチング法の応用にも成功した。また1分子のL型Caチャネルを介したCa2+流入(Ca2+スパークレット)の可視化にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全反射顕微鏡を用いた一分子可視化法とその応用としてのFRET法やホトブリーチング法の確立を行うことができ、3つの論文として報告した(さらに2報準備中)。これにより、正帰還Ca2+制御機構を担う分子群間の位置関係・分子間相互作用・分子複合体形成の解析が格段に進んできた。またTリンパ球や前立腺でのIKチャネルの発現・機能変化について、疾患モデル動物と患者での共通性が見出され、臨床的にも意義深い結果を報告することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 全反射顕微鏡による一分子可視化法と電気生理学的手法の併用により、さらに正帰還Ca2+制御機構を担う分子群間の位置関係・分子間相互作用・分子複合体形成と機能連関を解明する。すなわち各細胞でストア作動性Ca2+流入(SOCE)を担う分子の同定・機能解析を行うとともに、SOCEチャネルおよび関連分子とKCaチャネルとの機能共役が、複合体形成を介しているかを明らかにする。 (2) 各種病態モデル動物(接触性皮膚炎・過敏性大腸炎・前立腺肥大・慢性関節炎)を用いて、病態形成のキーとなる非興奮性細胞でのCa2+活性化K+チャネルの発現変化およびそのドミナントネガティブスプライスバリアントの発現変化が病態にどのような影響を与えているか、また創薬標的となり得るかをさらに解明する。 (3) Ca2+活性化K+チャネルの発現調節機構を更に深く解明し、各種疾患での調節異常の可能性を明らかにする。
|