研究課題/領域番号 |
23390021
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉浦 麗子 近畿大学, 薬学部, 教授 (90294206)
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研究分担者 |
喜多 綾子 近畿大学, 薬学部, 助教 (00388498)
村岡 修 近畿大学, 薬学部, 教授 (20142599)
藤原 俊伸 (財)微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主席研究員 (80362804)
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キーワード | MAPキナーゼシグナル / ケミカルゲノミクス / 分裂酵母モデル生物 / Ca2+ホメオスタシス / ゲルダナマイシン / ストレス耐性 / 抗がん剤感受性 |
研究概要 |
本研究は、ケミカルゲノミクスの手法を用いてMAPKシグナルネットワーク制御機構の解明を行うとともに、細胞増殖や癌化に深く関わるMAPKシグナル伝達経路を標的としたケミカルゲノミクスを展開することで、抗がん薬開発にむけての知見を蓄積することを目的としている。 本年度は、分子遺伝学的手法を用いて、新たなMAPKシグナルの制御因子としてVic2というTRPチャネルを同定し、機能解析を行った。Vic2遺伝子をノックアウトすると、細胞内Ca2+ホメオスタシスに異常が起こることから、Vic2は細胞内Ca^<2+>濃度のコントロールを介してMAPKシグナルの活性を制御する可能性が示唆された。さらに、分子シャペロンHeat shock protein90の阻害薬である"ゲルダナマイシン"がMAPKシグナルに影響を与えることを見出した。また、ノックアウト細胞コレクションを用いたゲノムワイドな手法を用いてMAPキナーゼシグナルの制御に関わる因子の同定を行った。さらにゲルダナマイシン存在下では、MAPKシグナル構成因子のタンパク質量が低下することから、Hsp90のクライアントタンパク質としてMAPKの構成因子が機能することを見出した。 一方、MAPKの標的因子として同定したNrd1はMAPKによるリン酸化依存的にミオシンmRNAと結合することにより細胞質分裂に関与することを明らかにしてきたが、Nrd1がストレス顆粒の構成因子としてストレス顆粒の形成を制御すること、ストレス耐性に関わることも明らかにした。さらに各種抗がん剤の感受性に関わる遺伝子群をゲノムワイドな手法で網羅的に同定したことろ、ドキソルビシンの感受性、耐性に関わる因子としてPolyA RNA結合タンパク質、KHタイプのRNA結合タンパク質Vgl1を同定した。また、MAPKシグナルの構成因子、ならびに制御因子の高等生物ホモログの解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ゲノムワイドなアプローチ、特にノックアウト細胞コレクションを導入することにより、予想したよりも飛躍的にMAPキナーゼシグナル制御、ならびにMAPKシグナルの標的となりうる遺伝子群に関する情報を手に入れることができた。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学的相互作用による"MAPキナーゼシグナル阻害化合物のフィンガープリント"を行うことにより、ゲルダナマイシンを始めとしたヒット化合物に関して、標的遺伝子の同定と細胞内作用メカニズムの解明、新たな生理活性の発見を行うとともに、モデル生物で同定した遺伝子に関してRNAiやノックアウトマウスなどの手法を用いて高等生物におけるホモログの解析を開始する。
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