研究課題/領域番号 |
23390023
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
岩田 誠 徳島文理大学, 香川薬学部, 教授 (50160122)
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研究分担者 |
宋 時栄 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (00399693)
門脇 則光 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60324620)
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キーワード | 樹状細胞 / レチノイン酸 / エピジェネティック / RALDH2 / 腸管 / T細胞 / Sp1 / 免疫寛容 |
研究概要 |
樹状細胞(DC)は組織内外の変化を察知して免疫反応を促進または抑制する司令塔である。DCの疾患治療への応用はがんに対して始まっている。他の疾患治療への応用も考える上で、DCが複数の亜集団から成り、その分類や分化過程が不明確なことが問題となる。我々は、腸関連組織にはレチノイン酸(RA)産生DCが存在し、RAを介してリンパ球を小腸組織に配備する役割を持つことを発見した。これらのDCはRAを介してT細胞機能分化にも影響を与えて免疫寛容に寄与する。特定のDC亜集団がRA合成酵素retinal Dehydrogenase 2(RALDH2)を発現している。本研究では、RALDH2発現制御の分子機構を明らかにすることにより、この特定のDC亜集団を選択的に誘導し利用するための基盤を構築する。本年度は、RALDH2遺伝子のプロモーター領域には複数のGC rich領域が存在し、この領域への転写因子Sp1の結合と、p38およびJNK MAPKの活性化がRALDH2遺伝子発現に必須であることを見出した(大岡、岩田)。GC rich領域はDNAメチル化によるエピジェネティックな制御を受けやすい領域でもある。正常マウスから得られたRA生産DC亜集団ではこの領域がほとんどメチル化されていなかったが、一部のDC細胞株ではほとんどメチル化されていた(大岡、岩田)。また、ヒトDCのうち、抹梢血myeloid DC(mDC)の特定のサブセット(CD1c^+ mDC)のみが、GM-CSFの存在下で1α,25-dihydroxyvitamin D3(VD3)の刺激を受けることによってRALDH2を高発現すること、RA自体が協調的にこれを促進することを見出した(門脇)。VD3の効果については、マウスDCではむしろRALDH2発現を制御する傾向を明らかにしており、種または細胞種によって異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度であるため、まだ本研究の成果による原著論文出版には至っていないが、現在準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスDCにおけるRALDH2発現誘導の分子機序を明らかにするため、RALDH2遺伝子の上流を中心にさらに解析する。DNAメチル化についても、さらに他の未解析のDC亜集団および細胞株について解析するとともに、核タンパク質の修飾、ヌクレオソームの構造変化などによるエピジェネティック制御についても解析する。マウスの結果を踏まえながら、ヒトDCまたはその前駆細胞から分化誘導したDCを用いてRALDH2発現誘導の分子機構の解析を続け、生理的な現象との整合性および組織におけるDC亜集団分布を調べる。ヒトとマウスでの共通点と相違点を明らかにし、その理由を検討する。
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