研究課題/領域番号 |
23390023
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
岩田 誠 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (50160122)
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研究分担者 |
宋 時栄 徳島文理大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00399693)
門脇 則光 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60324620)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / レチノイン酸 / エピジェネティック / RALDH2 / 腸管 / T細胞 / Sp1 / 免疫寛容 |
研究概要 |
腸やその関連リンパ組織にはレチノイン酸(RA)を産生する樹状細胞(DC)が存在し、RA依存性にT細胞に小腸組織への移入(ホーミング)特異性をインプリントし、機能分化を制御することで腸管免疫を制御する。しかし、そのRA産生能誘導の分子機序は不明だった。RA産生の鍵分子はretinal dehydrogenase 2 (RALDH2)であり、その発現誘導制御の分子機序を解析した。マウスRALDH2遺伝子上流のプロモーター領域は、一つのCpGアイランドに含まれることが判明した。そのCpG配列には転写因子Sp1が結合し、RALDH2遺伝子プロモーター活性を促進した。しかし、CpG配列をメチル化するとSp1による促進効果は抑制された。従って、メチル化によるRALDH2発現制御を想定した。実際、DC細胞株やマクロファージ(Mf)細胞株ではメチル化による制御が示唆されたが、正常マウスのDC、Mf、T細胞の場合はメチル化による制御は限定的で、他の制御機構の存在が示唆された。RALDH2プロモーター領域にはRA応答配列half-siteも存在し、RA受容体(RAR)/レチノイドX受容体(RXR)が結合すると、RA依存性にも転写が促進されることが示唆された。一方、ヒトDCについては、末梢血ではCD1c(+) myeloid DC (mDC)のみが、GM-CSFの存在下、活性型ビタミンD3(VD3)で刺激することにより、p38 MAPK依存性にRALDH2を高発現した。また、腸間膜リンパ節ではCD103(-) DCのみがVD3によりRALDH2を高発現した。RALDH2を高発現するCD1c(+) mDCは、同種ナイーブCD4 T細胞を刺激し、RA依存性にTh2サイトカインの産生と、腸管ホーミング受容体インテグリンα4β7の発現を誘導し、皮膚ホーミング受容体CLAの発現を抑制することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピジェネティック制御は、当初、予想したDNAメチル化だけでなく、正常免疫細胞ではむしろそれ以外の機序によって行われていることが判明したが、レチノイン酸誘導能発現の分子機序について順調に解明が進んでおり、ヒトとマウスの樹状細胞での違いについても明らかにしてきた。しかし、原著論文としての発表は、漸く始まったばかりであり、現在、2報について改訂作業中である。
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今後の研究の推進方策 |
正常マウスDCにおけるDNAメチル化以外のエピジェネティックなRALDH2発現制御を明らかにするために、核タンパク質やNF-κBなどのアセチル化/脱アセチル化による制御の可能性について検討する。また、RALDH2発現誘導に関わる転写因子を、さらにDNAアレイなどで探索し、RALDH2プロモーター活性制御に関与するものを同定、解析する。一方、ヒト末梢血DCにおいてもRALDH2発現誘導に必要な細胞内分子を、serial analysis of gene expression法 によるトランスクリプトーム解析、siRNAによるノックダウン法などを用いて同定を試みる。これらにより、ヒトとマウスのDCにおけるRALDH2発現誘導機序の異同を明らかにする。さらに、未熟DCから炎症抑制性RALDH2発現DCの分化誘導を試み、炎症性疾患モデル系での炎症抑制の可能性を検討する。
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