研究課題/領域番号 |
23390027
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
|
研究分担者 |
村田 和義 生理学研究所, 脳機能計測支援センター, 准教授 (20311201)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 細胞死 / ペプチド創薬 |
研究概要 |
申請者が見出した2つのハイブリッドペプチド(HybP1、HybP2)を化学ツールとして、その表現型および細胞応答としての「非アポトーシス型細胞死」を解析した。光学顕微鏡による観察では、2つのペプチドで誘導される白血病細胞株Jurkat-Tの細胞死は、熱処理(60℃で加熱)で起こるネクローシスの細胞形態とほぼ同じであった。そこで、熱処理細胞をコントロールとして用いて炎症との関連性を比較検討した。一般にアポトーシス細胞は、マクロファージによる貪食を受けやすい。しかし、蛍光標識したペプチド処理細胞と熱処理細胞を用いて検討したところ、両者ともマウス腹腔マクロファージによる取込みは、アポトーシス細胞に比べ顕著に低かった。また、炎症惹起因子の一つHMGB1分子の細胞外放出が顕著であった。以上のことより、2つのペプチドで誘導される細胞死は、ネクローシスと類似していることがわかった。 ハイブリッドペプチドが結合する受容体分子の同定を目的とし、ベンゾフェノン基とビオチンを含む修飾ペプチド試薬を、グリシンリンカーを挟んでHybP1ペプチドのN末アミノ酸にサクシミドエステルを介して連結した光アフィニティラベル用プローブ:Biotin-BPA-GG-Tat-Ram13を調製した。Jurkat-T細胞とインキュベーション後、結合タンパク質をウェスタンブロット法で検出を試みたが、特異的にラベルされた分子は確認できなかった。 白血病治療効果の評価を行うため、その治療薬としてHybP1のD体ペプチドメティック化合物を調製的スケールで合成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の計画通りに進み、ペプチドで誘導される細胞死がネクローシスと類似しているという生化学的知見が蓄積できた。一方で、ペプチドの結合する分子の同定は難航している。光ラベルプローブの大幅改良もしくはラベル条件の詳細な検討が必要である。また、ペプチドミメティックス化合物の合成は完了したが、観察ポイントの設定に手間取り白血病細胞を移植したマウスを用いた治療実験までは達成できなかった。来年度の早い段階で実験条件を整え、治療効果を判定する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の検討により、2つのペプチドによる細胞死は共にネクローシスであると考えられたことから、最終年度は以下の検討を行い、本課題の完成を目指す。 1.ペプチドで誘導される非アポトーシス型細胞死の特徴付け:昨年同様、位相差電子顕微鏡(研究分担者)を用い、2つのペプチドで誘導される細胞死形態について、従来型のネクローシスとの違いを詳細に比較観察する。また、核内に存在するHMGB1およびNup-88のGFP融合体を発現させたJurkat-T細胞株を樹立し、ペプチドによる細胞外放出をリアルタイム蛍光観察し、放出メカニズムを明らかにする。 2.ハイブリッドペプチドが結合する受容体分子の同定:昨年度、光ラベル試薬によるペプチドが結合するタンパク質の同定を目指したが、非特異的ラベルが多く失敗に終わった。今年度は、ラベル前の洗浄操作を強め、非特異的ラベルを減らす工夫を導入し、白血病細胞株Jurkat-Tに発現するペプチドの受容体分子の同定に取組む。 3.白血病細胞移植マウスを用いたペプチドミメティックの治療効果の検討(研究代表者):すべてD体アミノ酸からなるHybP1のペプチドメティック化合物の抗腫瘍活性をヒト白血病細胞株のヌードマウス移植系を用いて腹水産生量を指標に評価し、本研究の完成を目指す。
|