研究課題/領域番号 |
23390029
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
林 良雄 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (10322562)
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研究分担者 |
山崎 有理 東京薬科大学, 薬学部, 助手 (70459725)
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キーワード | 難治性疾患 / 難治性疾患 / 抗がん剤 / プロドラッグ / 創薬化学 / 遺伝子疾患治療薬 / リードスルー薬 / システインプロテーアゼ阻害剤 |
研究概要 |
難治性疾患の一つであるがん治療薬の研究では、ペプチド型天然物から創製した治験薬Plinabulinの化学構造に基づく次世代高活性化合物の創製をめざし、Plinabulinより約30倍殺腫瘍細胞活性が強い化合物TCP-113の周辺構造探索として誘導体を合成した。即ち、ベンゾフェノン環部の他構造への誘導などである。得られた高活性化合物については、細胞に対する作用の詳細な検討を実施、その結果を論文(J.Med.Chem.,55,1056-1071(2012))として報告した。一方、難水溶性であるPlinabulin(<0.1mg/mL in water)の薬剤学的高付加価値化をめざし、骨格変換を伴うユニークな水溶性プロドラッグ(TCP-120)の合成に成功した。水溶性補助基部分に関しては、さらに誘導体合成を進め、より薬剤学的に有意な構造の創製を進めている。遺伝病治療薬開発研究としては、ナンセンス変異に起因するDuchenne型筋ジストロフィーで、ナンセンスコドン読み飛ばしを促進するジペプチド型抗生物質(+)-ネガマイシンに着目し、強力なリードスルー促進化合物の創製研究から誘導体N-3を見いだした。、今回N-3の生物学的評価を進め、その結果を論文(ACS Med.Chem.Lett.,3,118-122(2012))として報告した。また、5-epi-ネガマイシンをリード化合物とする誘導体合成も進め、より高活性なdeoxy-3-epi-ネガマイシンを見いだすことができた。さらに、SARSコロナウイルスのシステインプロテアーゼ阻害剤開発研究では、基質ペプチドから阻害剤合成を進め、阻害機構として電子吸引性チアゾールケトン構造を有する高活性なトリペプチド型阻害剤を獲得することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗がん剤研究においては、臨床治験薬Plinabulinより強力な誘導体TCP-113の構造活性相関がまとまり、さらなる誘導体創製の糸口が得られた。さらに水溶性プロドラックの構造活性相関も進み、水溶性・半減期の異なる複数の誘導体の創製を進めており予定通りに研究が進行している。また、遺伝病治療薬の研究でも、ネガマイシンの2つの不斉炭素上の官能基の有用性の検証が実行でき、活性発現に必須な構造的因子の抽出が可能となり、強いリードスルー活性を有する誘導体の糸口が得られた。SARSコロナウイルスシステインプロテアーゼ阻害剤の研究でも、強力なトリペプチド型阻害剤を見いだすとともに、ジペプチド型への糸口が得られたことから、初年度の目標はほぼ達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチド性小型分子を基軸に難治性疾患としてがん、遺伝病、感染症を取り上げ、それぞれの創薬研究を遂行しているが、今後も実用的でDrugableな小型ペプチド分子の創製を継続していく、腫瘍新生血管内皮細胞障害剤の創製では、次世代型化合物の新規創製に注力し、遺伝病治療薬の創薬研究ではリードスルー促進薬の可能性の探求を継続する。ケミカルバイオロジー手法による標的分子およびその認識機構の解明も視野に入れるが、先ずは十分に有効な薬理活性を有する創薬分子の創製に集中したい。重症急性呼吸器症候群(SARS)の治療薬として、原因となるSARSコロナウイルスに必須なシステインプロテアーゼの阻害剤開発では、トリペプチド型からより薬物として有効なジペプチド型小分子阻害剤に移行して行く。これらの研究を通じて、ペプチド性小型分子の創薬における重要性・意義を証明していきたい。
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