研究課題/領域番号 |
23390029
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
林 良雄 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (10322562)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 難治性疾患 / 抗がん剤 / プロドラッグ / 創薬化学 / 遺伝子疾患治療薬 / リードスルー薬 / システインプロテーアゼ阻害剤 / 固相ジスルフィド縮合法 |
研究概要 |
抗がん剤研究ではジペプチド型天然物より自ら創製した治験薬プリナブリンを基に創薬研究を実施し、H24年度により高活性な新規抗チューブリン構造を発見した。この化合物KPU-300は、ベンゾフェノンとピリジンを持つ新規ジケトピペラジンである。H25年度は複数の誘導体を合成し、その活性評価を基に国内特許出願を完了させ、更にJST国際特許出願支援へ申請した。論文として学術誌への投稿準備をほぼ完了させた。またKPU-300の誘導体合成を実施した。これらの誘導体はH26年度に活性検定し、成果を国内優先へ反映させる。また、KPU-300をがん放射線療法の増感剤として応用することを発案し、東京医科歯科大三浦教授と共同研究を開始した。一方、遺伝病化学療法剤研究では、ナンセンス変異を読み飛ばすリードスルー天然物(ジペプチド型抗生物質ネガマイシン)を戦略分子にDuchenne型筋ジストロフィー治療薬開発を進めている。H25年度は、H24年度に取得した複数の活性化合物を基に、更に誘導体合成を行なった。その結果、天然誘導体TCP-126のプロドラッグTCP-199が最も高活性なアミノグリコシド系化合物G-418を凌ぐ高活性を示すことを発見した。現在、TCP-126の発見までの論文を学術誌に投稿中である。一方、筋肉増強ペプチドの創薬では、H24年度に発見した新規24残基ペプチドを特許出願し、更にJSTの支援により国際出願した。当該ペプチドのAlaスキャンによる構造活性相関を進め、活性発現に重要なアミノ酸残基の抽出を行なった。SARSウイルスプロテアーゼ阻害剤研究では、高活性ジペプチド型阻害剤に関して2報の学術論文を発表した。中分子ペプチド創薬に貢献できる極めて新規なペプチド合成法として、ジスルフィド結合を経由してペプチドを合成する固相ジスルフィド縮合法を発案し、その原理が実際に機能することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗がん剤研究では、臨床治験薬プリナブリンから新規な誘導体KPU-300の創製に成功し、特許出願が完了した。また、学術論文もほぼ完成に至っていることから、順調に進んでいると言える。KPU-300からの構造活性相関研究はさらに継続中であり、今後、がん放射線療法との併用を検討する研究を加えていくことで、より実用的な展開を模索できる状況に有る。また、遺伝子読み飛ばし作用に基づくリードスルー化合物創製研究でも、活性値において、昨年はネガマイシン越えであったが、今年度は最強のリードスルー化合物を遥かに凌ぐ高活性化合物の創製に成功しており、成果は着実に挙っていると言える。今後、動物モデルでの生物評価が実用性の判断において重要となってきた。一方、新規筋肉増強ペプチドも構造活性相関研究が進み出し、今後の進捗が大変興味深い状況となっている。ペプチドを基盤とする筋肉関連疾患治療薬研究が昨年度よりさらに前進していると言える。さらに、SARSコロナウイルスシステインプロテアーゼ阻害剤の研究でも、強力なジペプチド型阻害剤の創製に成功し、論文掲載も完了し、今後、酵素阻害評価のみならず抗ウイルス作用を検討する段階になっている。これらの事から、研究は総じて順調に前進しており、本年度の研究目標を概ね達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチド性小型分子を基軸に難治性疾患としてがん、遺伝病、感染症を取り上げ、それぞれの創薬研究を遂行しているが、最終年度も実用的な小型ペプチドの創薬研究を精力的に継続する。抗チューブリン作用に基づく血管遮断剤の創製では、新規骨格の構造活性相関を継続し、それらの誘導体はH26年度に活性検定し、成果を国内優先へ反映させる。そして、さらに高活性誘導体の獲得をめざすと共に、KPU-300については、放射線療法の増感剤としての可能性を追求する。遺伝病治療薬の創薬ではリードスルー促進薬の実用性探求を一層進める。特に、動物評価における有効性確認を実施する。マイオスタチン阻害ペプチドについては、大変有望であり高活性誘導体の創製により、第一弾の候補化合物を早く絞り込み、動物を用いた高次薬理評価をなるべく早く実施する。SARSコロナウイルスシステインプロテアーゼ阻害剤開発では、ジペプチド型化合物のさらなる高度化をめざしつつ、抗ウイルス作用を検証していきたい。これらの研究を通じて、ペプチド性小型分子の創薬における重要性・意義、さらに実用性を証明していきたい。
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