研究課題/領域番号 |
23390030
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
太田 茂 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60160503)
|
研究分担者 |
杉原 数美 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (20271067)
藤本 成明 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40243612)
古武 弥一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20335649)
佐能 正剛 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00552267)
|
キーワード | ヒト肝細胞移植キメラマウス / 化学物質 / リスク評価 / 薬物動態 / 薬物代謝 |
研究概要 |
近年化学物質のうち有毒金属、有害有機物や農薬による環境汚染やヒトにおける毒性が問題となっている。その中で、これら環境化学物質のヒトへの安全性は、実験動物等のデータを基に評価が行われている。しかし、ヒトの無毒性量を求める上で、ヒトと動物での毒性種差や感受性の個人差などで生じる不確実さによって、ヒトへのリスクを見誤る可能性もある。化学物質の有用性と毒性のバランスを考慮する上でも、今後、化学物質のヒトリスク評価を精度よく見積もる手法の開発が求められている。免疫不全の性質をもつSCIDマウスと肝障害の性質をもつuPAトランスジェニックマウスをかけ合わせたマウスにヒト肝細胞を移植した「ヒト肝細胞移植キメラマウス」は、ヒト型の薬物代謝酵素が発現されているために医薬品におけるヒト薬物動態予測に応用できる可能性が報告されている。本研究ではヒト肝細胞移植キメラマウスを用いて化学物質のヒトにおける肝代謝、そして肝毒性予測評価についても、定性的・定量的に精度よく予測できると考え、その検証を行うことを目的としている。 本年度は、まず肝における化学物質の甲状腺ホルモン撹乱作用評価を行った。医療用医薬品として用いられるも甲状腺ホルモン撹乱作用を有するアミオダロンを検証化合物とした。アミオダロンと甲状腺ホルモンを曝露後の甲状腺ホルモン依存性発現遺伝子発現変動をin vitro、in vivo実験から調べた。さらに、アミオダロンをヒト肝細胞移植キメラマウスに投与後の血漿、尿中から、甲状腺ホルモンかく乱作用に寄与する活性代謝物を検出した。今後、これら発現変動とアミオダロンの暴露濃度との関係を詳細に検証する予定である。 一方、薬物代謝酵素であるチトクロームP450やグルクロン酸抱合転位酵素などで代謝される医薬品であるイブプロフェンなどを用い、ヒト肝細胞移植キメラマウスを用いたヒト体内動態予測性を検証した。結果、ヒト肝細胞移植キメラマウスのプロファイルは実際のヒトに反映していたことから、ヒト肝キメラマウスの肝臓における薬物代謝酵素活性は、ヒト型であることが示された。以上から、ヒト肝細胞移植キメラマウスは、体内動態と毒性予測に有用であるごとが期待され、今後、アミオダロン以外の検証化学物質についても検証に加え、これらのヒトリスク評価を行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検証化合物として、甲状腺ホルモン系に影響を与えるアミオダロンを選択し、ヒト肝細胞移植キメラマウス評価の動態評価を行うことができた。この結果から、アミオダロンは、化学物質のリスク評価のリファレンスとして用いることができることが明らかとなり、今後の検証化合物の種類を増やした評価に一定の方向性を示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、検証を行う化学物質をさらに増やして、ヒト肝細胞移植キメラマウスに投与後の体内動態と、肝臓における毒性の関係を調べ、ヒトリスク評価へのアプローチを精査していく。
|