研究課題/領域番号 |
23390030
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
太田 茂 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 教授 (60160503)
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研究分担者 |
佐能 正剛 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 助教 (00552267)
杉原 数美 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20271067)
古武 弥一郎 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 准教授 (20335649)
藤本 成明 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40243612)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 薬学 / ヒト肝細胞移植キメラマウス / 化学物質 / リスク評価 / 薬物動態 |
研究概要 |
近年、化学物質による環境汚染やヒトにおける毒性が問題となっている。その中で、これら環境化学物質のヒトへの安全性は、実験動物のデータを基に評価が行われている。しかし、ヒトと動物での毒性種差や感受性の個人差などで生じる不確実さによって、ヒトへのリスクを見誤る可能性もあり、今後、化学物質のヒトリスク評価を精度よく見積もる手法の開発が求められている。 当該年度は、免疫不全の性質と肝障害の性質をもつuPAトランスジェニックマウスにヒトの肝細胞を移植し、マウスの肝臓がヒトの肝細胞に置換された「ヒト肝細胞移植キメラマウス」を用いて、化学物質の肝臓における甲状腺ホルモン撹乱作用について検討を行った。ヒト肝細胞移植キメラマウスに抗甲状腺薬propylthiouracil(PTU)単独投与ならびに、PTUおよび甲状腺ホルモンtriiodothyronine(T3)を併用投与し、肝臓中の甲状腺ホルモン関連遺伝子の発現変動を評価した。その結果、併用投与群において、typeI deiodinase(DIOI)やmalic enzyme 1(ME)など複数の遺伝子のmRNA発現増加が認められた。T3血清中濃度もコントロール群やPTU単独投与群に比べ、PTUとT3の併用投与群で高くなっていることも確認した。肝臓で発現が増大した遺伝子は、別に行ったラットにおける評価結果と比較して、概ね同様の遺伝子群であった。ラットとヒトで甲状腺ホルモン受容体のアイソフォームの発現に種差が報告されているものの、T3における肝臓への甲状腺ホルモン関連遺伝子への影響は、ラット、ヒト間で大きな種差がないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト肝臓における甲状腺ホルモン撹乱作用を見積もる方法として、甲状腺ホルモン関連遺伝子の発現変動を見ることをエンドポイントに評価できることが示唆された。これはラットのデータと比較することで種差の有無を検討することができる可能性もある。ただ、複数の化学物質を用いて評価することで評価系をバリデーションしていく必要もある。
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今後の研究の推進方策 |
複数の化学物質を用いて評価することで、本評価系の有用性を確立していく必要がある。これらは、ヒト肝細胞移植キメラマウスに投与し、肝臓における甲状腺ホルモン関連遺伝子の発現変動を評価する。また。ラットでのデータと比較し種差を確認していく。肝臓で代謝され、活性が変動することが想定される化学物質については、代謝物の生成の種差についても検討する。以上の結果をまとめながら、ヒトリスク評価へつなげていくことを予定している。
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