研究課題/領域番号 |
23390032
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
小椋 康光 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (40292677)
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研究分担者 |
阿南 弥寿美 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (40403860)
徳本 真紀 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (90614339)
小泉 信滋 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 研究企画調整部, 特任研究員 (80183325)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | セレン / スペシエーション / テルル / ICP-MS / ESI-MS-MS / セレノシアネート |
研究概要 |
研究代表者は分子進化という観点から、生体内で抗酸化的な機能を果たすセレンや銅の代謝機構を明らかにし、必須元素が必須たる理由を探求している。その全体構想の中にあって本研究の目的は、化学形態分析を主たる研究手法として、生体によるセレンの代謝機構と生理作用の全容解明に迫ることである。セレンという元素の化学形態に着目し、高感度分析、同位体標識、分子種同定などが可能である質量分析法を用い、従来の手法では得ることが難しかった代謝過程の追跡やセレンタンパク質の新規の機能に関する情報を得ていく。これらの情報を統合して、様々な生態環境において、生体が健康を維持する上でセレンがどのように機能しているのかを明らかにし、この機能をさらに改良するような創薬シーズを提示し、ライフイノベーションに繋げることが、本研究の目的である。 特に本年度は、培養細胞を用いてセレンの代謝機構を解明することを前年度より継続して行った。これまで培養細胞を用いた化学形態分析は得られる試料が微量であるため、ほとんど実施されることがなかったが、研究代表者らの開発した方法により、実験動物を用いなくても生体微量元素の代謝物分析が実施できるようになったため、独自の成果が得られるものと期待していた。 幸いなことに、培養細胞を用いたことにより、これまでwhole animalでは観察できなかったセレンの代謝物を検出することに成功した。この新規セレン代謝物を種々の質量分析法を駆使して解析したところ、セレノシアネートという新規のセレン代謝物であることが明らかとなり、新たな代謝機構の提唱に成功した。 一方、セレンの分析上の対照として用いていたテルルについても併せて解析したところ、セレン蓄積性の生物において、特有のテルル代謝物の同定に成功した。これについても新たな代謝経路の提唱を果した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主題であるセレンについては、これまで代表者らが培ってきた手法を駆使することにより、新たな代謝物の同定に成功した。これにより、生体必須元素であるセレンの新たな代謝過程を提唱するに至った。 一方で、セレン分析の対照として用いていたテルルについても、検討をしてみたところ、従来の概念では知られていない代謝経路の存在を示唆することができた。 いずれの成果も全く新規の知見を提唱するものであり、独創性の高い成果と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においても、当初の計画を大きく変更する点は無い。前年度の成果を受けて、さらに検討すべき点について、研究を進める。特にセレンについては、代謝の側路的な反応に着目し、検討を継続する。従来からの化学形態分析に加えて、分子生物学的な側面からもアプローチを加える。 テルルについては、未だ明らかとしていない代謝物が残っているので、これについても引き続き検討を継続し、生物におけるテルルの代謝過程の全容を明らかにする予定である。 最終年度にあたり、論文発表や学会発表も精力的に行い、本研究の波及効果を狙うことも想定している。 さらに、本年度のひらめき☆ときめきサイエンスに採択されていることから、これまでの成果の社会還元にも務める。
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