研究課題
尿毒症物質は濃度依存性にSLCO4C1のmRNA発現を低下させた。またルシフェラーゼアッセイから尿毒症物質はSLCO4C1遺伝子発現を転写レベルで有意に低下さることが明らかとなった。この尿毒症物質によるSLCO4C1転写抑制作用はAhRの結合するXRE配列より更に5'上流にある転写因子GATAの阻害剤にてキャンセルされた。一方、慢性腎臓病において腎性貧血は主要な合併症のひとつであり腎性貧血の病態はエリスロポエチン(Epo)産生の低下を基盤とすることが知られている。腎機能の低下がどのようにEpo産生に影響を及ぼすかについては不明な点も多いが血液透析によって腎性貧血が改善したという報告があり、尿毒症物質がEpo産生低下を引き起こす可能性が考えられていた。そこで我々は低酸素条件下でエリスロポエチン(Epo)産生が誘導される細胞を用いて尿毒症物質を含んだ培地で培養しEpo産生への影響を評価したところEpo産生を有意に抑制した。Epo遺伝子の5'上流域を用いたルシフェラーゼアッセイを行ったところ、尿毒症物質はEpo遺伝子の転写を有意に低下させ、このEpo転写抑制作用はSLCO41と同じGATA阻害剤にてキャンセルされることが明らかになった。この結果は腎不全時においては尿毒症物質の蓄積はトランスポーターの発現抑制を起こし尿毒症物質の更なる蓄積が進行し、同時に貧血を惹起するという2つの作用があること、そしてそのどちらの作用もGATA転写因子という共通のメカニズムを介していることを明らかにしたものであり新たな慢性腎臓病の治療のストラテジーになり得ることを示した。
2: おおむね順調に進展している
慢性腎不全おけるトランスポーターの新たな制御機構を解明し、その治療法の糸口を解明したと考えられるため。
今後はGTA転写因子阻害剤を5/6腎摘ラットやGBM抗体投与腎炎ラットに投与し腎機能の各種パラメーターと酸化ストレスマー、さらに血中尿中メタボローム解析を行い、腎不全の新たな治療法としての有用性を検討する予定である。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
Therapeutic Research
巻: 33 ページ: 309-314
医学のあゆみ
巻: 240 ページ: 201-203
J Atheroscler Thromb
巻: 184(Epub ahead of print)
Clin Exp Nephrol
巻: 15 ページ: 676-87
J Pharm Sci
巻: 100 ページ: 3696-707
10.1002/jps.22641
Seikagaku
巻: 83 ページ: 323-8
Biol Pharm Bull
巻: 34 ページ: 389-95
J Am Soc Nephrol
巻: 22 ページ: 635-48
日本甲状腺学会雑誌
巻: 2 ページ: 174-177
臨床薬理
巻: 42 ページ: 147-148
http://plaza.umin.ac.jp/~takaabe/
http://www.int2.med.tohoku.ac.jp/