研究課題/領域番号 |
23390033
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 高明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80292209)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 尿毒症 / トランスポーター / インドキシル硫酸 / SLCO4C1 / GATA |
研究概要 |
尿毒症物質が直接SLCO4C1遺伝子の発現を抑制する可能性を検討するため,腎機能低下とともに血中に蓄積する各種化合物を用いこれらのSLCO4C1 mRNA発現への影響をスクリーニングした.その結果インドキシル硫酸(IS)が濃度依存性にSLCO4C1発現を抑制し,同時に転写因子であるGATA3の発現を濃度依存性に亢進させていることが明らかとなった。SLCO4C1遺伝子のプロモーター領域にはGATA配列が複数存在することから,GATA3がSLCO4C1の転写へ及ぼす影響を検討したところ,GATA3はSLCO4C1の発現を負に制御することが明らかとなった。. 次にラットにISを投与したところ,腎機能は不変であるにも関わらず腎slco4c1の発現が低下し,さらにslco4c1の基質であるGSAの血中濃度が上昇した.また慢性腎不全モデルラットに対しAST-120を投与したところ,腎機能はコントロール群と比較し差は見られなかったが,ISの血中濃度の低下とともにslco4c1 mRNAの発現が有意に上昇し,GSAの血中濃度が低下した。 これらよりSLCO4C1の発現はGATA3により負に制御されており,ISはGATA3の発現増強を介してSLCO4C1の発現を低下させることが示唆された.以上よりISはSLCO4C1の発現を抑制してしまうことで本来SLCO4C1により排泄されるべき尿毒症物質の蓄積も引き起こしてしまう可能性が示唆された。 ISによるGATA3発現増強のメカニズムは今後検討する必要があるがGATA3の抑制がSLCO4C1の発現を回復させる可能性が示されたことから,尿毒症物質排泄のターゲットとしてGATA3も候補となりうると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は尿毒症物質が腎臓のトランスポーター機能を低下させ、更にその低下が腎機能を悪化させるという悪性サイクルのメカニズムを明らかにした。尿毒症物質の中でもインドキシル硫酸は尿毒症物質トランスポーターであるSLCO4C1の発現を転写調節因子GATA3を介して調節していることが明らかとなり、またインドキシル硫酸を除去するAST-120がトランスポーター機能の改善をもたらす事を世界に先駆けて明らかにした。 上記の結果は論文投稿中であるり、本申請の目的を達成していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
尿毒症の排泄機能回復が腎機能と同時に転写調節因子GATA3を介していることが明らかになったので、今後は更に尿毒症物質と腎性貧血との関係を明らかにしてゆく。
|