研究課題/領域番号 |
23390035
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
家入 一郎 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (60253473)
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研究分担者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究院, 助教 (80423573)
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キーワード | CYP3A4 / 立体空間的発現制御 / メチル化 / CpGアイランド |
研究概要 |
CYP3A4遺伝子のDNAメチル化領域の転写への影響とCYP3A4遺伝子発現メカニズムを空間転写モデルに基づき明らかにすることを目的とした。1.HepG2細胞を5-aza-dCまたはTrichostatin A (TSA)処理した。CYP3A4および転写に関与する複数の転写因子の発現量をreal-time PCR法により測定した結果、脱メチル化により、転写因子の発現上昇を伴わずにCYP3A遺伝子の発現増加を見た。2.CYP3A4発現量との間に強い相関を認めたCpGアイランド(CpGI)とその前後のCpG領域を含むベクター(VC)を作成し転写活性への影響を評価した。各VCにはCYP3A4転写開始点近傍約2kbpの領域を含めた。その結果、CYP3A4発現量と相関を認めたCpGIを含むVCにおいてのみTSA存在下で転写活性の上昇を見た(約34倍)。3.5Mbp離れたCpGIとCYP3A4遺伝子の空間的距離を明らかにするため、CYP3A4mRNA発現量が既知のヒト肝臓検体で3C解析を行った。その結果、CpGIとCYP3A4遺伝子、その2kbp上流域において近接効果を認め、発現量の高い肝臓検体では、低い検体と比べ有意に高い結合頻度を示した。以上の結果より、脱メチル化によるCYP3A4発現上昇は、CYP3A4遺伝子自体の脱メチル化に起因すること。レポーターアッセイの結果より、ヒト肝臓においてCYP3A4発現量と相関を認めたCpGIの重要性が示唆された。同領域は3C解析により立体的にCYP3A4遺伝子に近傍し、相互作用を行っていることが示唆された。発現量の高い検体程、CpGIがCYP3A4遺伝子に立体的に近づいていると考えられた。CYP3A4遺伝子発現制御にはエピジェネティック制御機構に基づく空間配置の変化が重要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初その重要性が予測された3カ所の領域の機能を特定することができ、次のステップへの移行が図られた事、精度等には検討点を残すものの、3C解析が可能であることが示唆された点など、年度内にすべき検討項目に結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現在開発済みの3C解析においては、PCRによる増幅領域が大きいため、目的以外の領域もPCR産物に含まれている。そのため、mRNA発現量との間にブロードな相関が得られることから、より目的領域特異的なプライマー設計を通して、評価領域に焦点を当てたより精度の高い3C解析の開発が望まれる。 (2)その後、ヒト肝検体数を増やし、目的領域同士の空間距離とCYP3A4mRNA発現量とのより精度の高い相関評価を行い、得られた結果の検証を行う予定である。
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