研究概要 |
1. これまでに無症候性脳梗塞(SBI)を血漿中のアクロレイン抱合蛋白質(PC-Acro)、インターロイキン-6(IL-6)、C-反応性蛋白質(CRP)を測定することにより約85%の精度で見つけることに成功している。本年度は、アクロレインが脳細胞で防禦反応としてIL-6を産生し、次いでIL-6が肝細胞で同じく防禦物質であるCRPを産生することを、細胞培養レベルで明らかにした。また、アクロレインは脳細胞だけでなくマクロファージ並びに平滑筋細胞でもIL-6産生を促進すること、並びにその分子メカニズムとしてアクロレインが転写因子であるAP-1のサブユニットであるC-junのリン酸化及びNF-κBのP65のリン酸化を促進することにより転写レベルでIL-6合成を促進することを明らかにした。 2. これまでにアルツハイマー病(AD)のバイオマーカーとして血漿中のPC-Acro並びにアミロイドβ(Aβ)40/42が有効であることを報告した(J. Alzheimer’s Dis. 32, 33-41, 2012)。本年度は、軽度認知障害(MCI)とADを区別できるバイオマーカーの探索を試みた。その結果、脳脊髄液中のAβ40とAβ40/PC-AcroがADではMCIに比べて有意の差で減少することが明らかとなった。また、バイオマーカーは画像に比べMMSE(認知症検査)と強く相関することが明らかとなった。 3. 脳梗塞の治療薬として、NMDA受容体のチャネルブロッカーの開発を試みた。その結果、ポリアミンの誘導体であるN1’,N1’-(hexane-1,6-diyl)bis(N5-(2-methoxybenzyl)pentamine-1,5-diamine)が脳梗塞の治療薬の前駆物質として有用であることを、脳梗塞モデルマウスを用いて明らかにした。
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