研究課題/領域番号 |
23390039
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
荒木 伸一 香川大学, 医学部, 教授 (10202748)
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研究分担者 |
江上 洋平 香川大学, 医学部, 助教 (80432780)
川合 克久 香川大学, 医学部, 助教 (80534510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞 / 分子スイッチ / Rac1 / マクロパイノサイトーシス / 光遺伝学 |
研究概要 |
Rac1は低分子量GTPase分子スイッチの一つであり、アクチン細胞骨格の重要な調節因子として様々なアクチン依存性の細胞運動の制御に関わっている。植物の青色光センサーであるphototropinのLOV2ドメインをGTP結合型Rac1に融合させたphotoactivatable (PA)-Rac1は、青色レーザー照射により共焦点顕微鏡下で時空間的に活性化することができる。この研究で我々は、PA-Rac1を発現させたRAWマクロファージに青色レーザーを照射することでRac1のオン・オフを光制御し、アクチン依存性の液相性エンドサイトーシスであるマクロパイサイトーシス過程を顕微鏡下でphoto-manipulationすることに世界で初めて成功した。 mCherry融合PA-Rac1を発現させた細胞を顕微鏡下で確認し、その細胞の一部を青色レーザーで照射すると、その領域付近で著しい細胞表層ラッフリングが起こり、多数のマクロパイノゾーム前駆構造が形成された。照射部位にはアクチンの集積やPI(4,5)P2の産生など初期マクロパイノサイトーシス過程の指標となる分子のリクルートも確認された。しかし、PI(3)P, Rab21等マクロパイノゾーム成熟にかかわる分子のリクルートは見られなかった。青色レーザー照射を止めると、ラッフリングはおさまり、マクロパイノゾーム様構造の幾らかはRab21陽性のマクロパイノゾームとして細胞中央へ向かって移動しはじめた。即ち、Rac1活性化状態のままではマクロパイノゾーム前駆構造は開口したカップ状態で留まり、不活性によってマクロパイノゾームへの閉鎖が起こり成熟過程へ移行することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PA-Rac1の光制御によりRac1を活性化状態にすることでマクロパイノサイトーシスの初期過程であるrufflingとマクロパイノサイティクカップの形成を誘導することができ、さらに、光照射を止めることでRac1不活性化することでカップの閉鎖とマクロパイノゾーム成熟に関する分子(Rab21,FYVEなど)をリクルートさせることができた。マクロパイノサイトーシスの過程のなかで、Rac1の活性化が必要とされる段階と不活性化が必要とされる段階を区別し顕微鏡下でコントロールすることに成功し当初の目的をほぼ達成したといえる。これらの成果を論文として投稿し、さらに定量的解析、追加実験データを加えScientific Reportsに掲載された。他にいくつかの学会でも研究成果を報告している。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージのphagocytosis過程においてもアクチン細胞骨格制御にRac1が関与していることが知られているため、PA-Rac1光制御システムを応用してphagocytosis過程でのRac1分子スイッチの役割解明にも研究を発展させる。また、マクロファージ以外の細胞では、がん細胞のラメリポディア形成、細胞接着進展、細胞移動などでRac1分子スイッチのオンとオフ、それぞれの役割を解析することでがん細胞の浸潤、転移機構の解明にも取り組んでいる。PA-Rac1以外のoptogenetics光制御ツールとの組み合わせでphosphoinositide代謝との関連も検討する。
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