研究課題/領域番号 |
23390040
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西 真弓 奈良県立医科大学, 第一解剖学講座, 教授 (40295639)
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研究分担者 |
堀井 謹子 奈良県立医科大学, 第一解剖学講座, 助教 (80433332)
東 超 奈良県立医科大学, 第一解剖学講座, 講師 (90326322)
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キーワード | 母子分離 / ストレス / c-Fos / コルチコステロイド / 分界条床核 / 扁桃体中心核 / PTSD / 馴化 |
研究概要 |
幼少期の養育環境の劣悪化等のストレスが脳の機能・構造に重大かつ継続的な諸問題を引き起こし、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などに罹患する確率が上昇すること等が報告されている。しかし、幼少期の一過性のストレスが生涯にわたって行動に影響を及ぼす分子基盤は未だ完全には解明されていない。本研究は、母子分離(maternal separation:MS)動物を用い、幼少期ストレスが発達期及び成長後の脳の可塑性に及ぼす影響を、遺伝子と環境との相互作用を切り口に、分子から行動まで生物階層性の段階を追って解析することを目的とする。平成23年度は、c-Fos発現を指標にしてMSにより活性化される脳部位を詳細に検討した。生後1日から14日(P1-P14)、3時間/日のMSを行う群(repeated MS:RMS)と生後2週目(P14)に一度のみMSを行う群(single MS:SMS)、さらにP15-P21の1週間RMSを行う群で実験を行った。まず、ストレスホルモンのコルチコステロン濃度を測定した。P14では対照群、RMS群では有意差はなく低値をしめしたが、成体においてはRMS群において有意に高値を示した、c-Fos発現について、視床下部および辺縁系の多くの部位でRMS及びSMSによりc-Fos発現は対照群に比して有意に増加したが、分界条床核と扁桃体中心核においてはRMSでは有意な増加は認めず、SMSでのみ有意な上昇を認めた。一方、P15-21のRMS群においては、多くの部位ではc-Fos発現の増加は認められず、海馬CA3および外側中隔核においてのみ有意な増加を認めた。これらの結果より、MSストレスに対する神経細胞活動、特に馴化などには臨界期のようなものが存在することが示唆された。今回、有意な変化が認められた脳部位がMSストレスに対する馴化に関与する可能性について、エンケファリン、内因性エンドカンナビノイドなどの影響について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は幼少期ストレスが発達期及び成長後の脳の可塑性に及ぼす影響を、遺伝子と環境との相互作用を切り口に、最終的に分子から行動まで生物階層性の段階を追って解析することを目的とするが、初年度においてはまず脳のどの部位の神経細胞が母子分離ストレスによって活性化するのかを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において明らかとなった活性化脳部位に関連する行動解析、さらには活性化脳部位の組織を単離し、DNAマイクロアレイ解析によって、母子分離ストレスによる遺伝子発現の変化について解析を進めていく予定である。
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