研究課題/領域番号 |
23390043
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
久野 みゆき 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00145773)
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研究分担者 |
酒井 啓 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90382192)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生理学 / 生体分子 / 細胞・組織 / 生理活性 / シグナル伝達 |
研究概要 |
破骨細胞では、プロトン排出を担う空砲型プロトンポンプ(V-ATPase)と電位依存性プロトンチャネル(H+チャネル)が細胞膜だけでなく細胞内酸性小胞膜でも共存する可能性がある。これに留意し異なるアプローチで両者の関連を検討した。①V-ATPaseとH+チャネルによるH+ fluxの制御因子: V-ATPase電流による過分極を測定し、近傍のH+チャネルを抑制すると推測された。リン酸を投与するとH+チャネル電流が可逆的に減少し、同時にtime-independentな外向きH+電流が生じた。後者がV-ATPase電流かどうかを検討中である。② phagosomeと細胞膜のH+ flux機構: zymosanを破骨細胞に取り込ませ、phagosomeのpH変動を測定した。Phagosome pHは徐々に低下し(pH < 5.6)、bafilomycinでブロックされたため、食胞酸性化にV-ATPaseが寄与することを確認した。更に観察を続けると食胞pHの急激な一過性上昇(pH spikeと命名)が起こり、食胞膜のH+濃度勾配を解消する機構が示唆された。phagosomeと破骨細胞膜のH+ flux機構には共通性が高いと考え、破骨細胞膜をpH<5.6に暴露した際に活性化されるH+電流とpH spikeを担うH+ flux機構との関連を現在調べている。③ V-ATPaseとH+チャネルの細胞内プール:NH4Cl投与で細胞内pH上昇が持続すると、pHが元に戻ってもH+チャネルコンダクタンスは一部しか回復しなかった。NH4Clで膜蛍光マーカー(FM1-43)の取り込みが促進され、dynaminのブロッカーがこれらの現象を抑制することから、細胞内アルカリ化によって細胞膜H+チャネルの内胞化が起こると推測した。結果の一部は、生理研研究会、日本生理学会大会などで発表し、投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
V-ATPaseとH+チャネルの活性、H+リーク、バッファー効果などH+ fluxに直接関わる要素についは、正確な定量的解析が行える状況になった。その応用成果として、細胞内アルカリ化によって誘導されるH+チャネルの内胞化、食胞で起こるpH-spike現象、細胞外に加えたリン酸に対するH+チャネルの応答を発見した。H+チャネルの予備プールの存在を確定したことも一歩前進である。現在、結論に至っていない予備実験結果もあるが、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
V-ATPaseとH+チャネルの間に機能的干渉が起こることは証明できたが、V-ATPase活性が大きくても干渉が起こらない細胞もあることがわかってきた。その理由を明らかにするために、個々の細胞における2つの分子の細胞内局在を同定することが求められる。しかし、これまでに行った抗体を用いた免疫組織染色法で、glass上に培養した破骨細胞での両者の分布は、細胞によってばらつきが大きく混在していた。両者の干渉を考える上では、「解剖学的距離」というより「機能的距離」の概念がむしろ適しており、その解明には従来の手法では不十分であろう。私達の長期目的である「プロトンシグナリング」の実体化のために、細胞極性を誘導したり、特異的endocytosisで細胞膜一部を分離するなど、両者の「機能的距離」を積極的に生み出す手法を探り、解明の糸口としたい。具体的には、①V-ATPaseによるH+チャネル内胞化の検討、②骨代替基質の開発、③phagosomeにおけるV-ATPaseとH+チャネルの干渉、④H+チャネル分子のH+センサー機能の意義の解明を目標とする。
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