研究課題/領域番号 |
23390045
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
久保 義弘 生理学研究所, 分子生理研究系, 教授 (80211887)
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キーワード | 代謝型受容体 / オーファン / スプライス変異 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
同一のPrrt3遺伝子から、7回膜貫通型の大きなN端細胞外領域を持つ代謝型受容体(Prrt3-Long)と、スプライシングの違いにより、その細胞外領域のみからなる分泌タンパク質(Prrt3-Short)が作られる。しかし、データベース上に遺伝子の登録があるのみで先行研究は皆無で、機能は全く未知である。我々は、その機能の解明を目的として、これまで、遺伝子破壊マウスの作成を進めてきた。その結果、遺伝子破壊ホモマウスは、母乳の摂取行動に問題があるためか、生育が遅れ、ほとんどの個体が1週間以内で死亡することを見いだした。ただし、生後数日で遺伝子改変ホモマウスのみを残すと、母乳の摂取が良好に行くためか、生存する個体も時折見られた。遺伝子破壊ヘテロマウスは正常に生育した。遺伝子破壊マウスの行動解析には十分な数の個体の確保が必要であるため、ホモマウスでの実施は不可能だった。そこで、遺伝子破壊ヘテロマウスを用いて行動解析を行った。その結果、野生型に比して、空間学習記憶の長期保持が低い等の異常がみられることが明らかになった。また、遺伝子破壊ホモマウス脳を用いた抗体染色の結果、野生型マウスでみられたパターンが消失せず、これまでの染色結果が、抗体の他蛋白とのクロスリアクションによることが示された。遺伝子破壊の代わりに挿入されるよう仕組んだlacZ遺伝子の発現は、海馬錐体細胞と、小脳プルキンエ細胞に高いことが観察された。この結果は、Allen brain atlasに登録されているPrrt3 RNAの発現パターンとほぼ合致し、また、遺伝子破壊により空間学習記憶の保持が低下することとも、関連するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子破壊マウスの作成に順調に成功し、そのヘテロマウスを用いた網羅的行動解析を実施できたことは、この遺伝子の機能を明らかにする意味で、大きな進展だったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一方で、遺伝子破壊ホモマウスを用いた免疫組織化学的解析において、野生型マウスで染色された部域のシグナルが消失しなかったことから、これまでの発現パターンに関する知見は再考が必要であることが明らかになった。抗原部位を変えた特異抗体を再作成するなどして、解析を継続する予定である。
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