研究課題/領域番号 |
23390045
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
久保 義弘 生理学研究所, 分子生理研究系, 教授 (80211887)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 代謝型受容体 / オーファン / スプライス変異 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
同一のPrrt3遺伝子から、7回膜貫通型の大きな N 端細胞外領域を持つ代謝型受容体(Prrt3-Long)と、スプライシングの違いにより、その細胞外領域のみからなる分泌タンパク質(Prrt3-Short)が作られる。しかし、データベース上に遺伝子の登録があるのみで先行研究は皆無で、機能は全く未知である。 我々は、その機能の解明を目的として、これまで、遺伝子破壊マウスの作成を進めてきた。得られた遺伝子破壊ホモマウスは、母乳の摂取行動に問題があるためか、高い致死率を示した。そこで、平成23年度には、遺伝子破壊ヘテロマウスを用いて行動解析を行い、空間学習記憶の長期保持が低い等の異常がみられることを明らかにした。 平成24年度には、遺伝子破壊ホモマウスでの行動解析を可能とするため、共同研究により、条件的遺伝子破壊のための Prrt3遺伝子 flox マウスの作成に取り組んだ。既に、ヘテロのfloxマウスが得られているため、条件的遺伝子破壊に成功するのは確実な状況である。 時々得られる遺伝子破壊ホモマウス脳を用いた免疫染色でシグナルが消えないことから、これまで作成した抗体は、特異性に問題があることが明らかになった。そこで、共同研究により、抗原部位を変えて、多種の新たな特異抗体の作成を開始した。その結果、Western blot解析において、野生型マウスで、KOマウスでは見られないバンドを検出する、すなわち、特異性の高い抗体を得ることに成功した。しかし、4%パラホルムアルデヒド固定では、組織染色では野生型でもシグナルがみられないため、固定条件等を現在工夫しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子破壊ホモマウスの生存率が低いことから、条件を打開するために、条件的遺伝子破壊マウスの作成に踏みだし、キメラ率の極めて高いマウスが既に得られていること、抗原部位を変えてみることにより、特異性の高い新規抗体が新たに得られたことは、この遺伝子の機能を明らかにする意味で、大きな進展だったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Prrt3遺伝子floxマウスが完成し次第、種々のCreマウスと交配させることにより、大脳特異的遺伝子破壊ホモマウス、小脳プルキンエ細胞特異的遺伝子破壊ホモマウス、薬剤誘導による遺伝子破壊ホモマウス等を作成する。生存率が充分高いようであれば、個体数を増やして、条件的遺伝子破壊ホモマウスの、網羅的行動バッテリー解析を行う。 また、特異性の高い新規抗体を用いて、改めて免疫組織化学的解析を行う。さらに、この新規抗体を用いて、マウス脳においてPrrt3と免疫共沈するタンパク質を探索し、見つかった場合には、質量分析解析によりそのタンパク質を同定する。 リガンドの同定を目指し、Prrt3遺伝子をin vitro 発現系に、Galpha16Z44遺伝子と共発現することにより、Gq結合型応答を示すようにせしめ、種々の小分子等用を投与に対するCa2+応答を記録することにより、Prrt3受容体を活性化する分子を探索する。
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