研究課題
本研究では、Na+/H+交換輸送体(NHE1)の活性調節に必須な脂質結合ドメイン(LID)の構造と機能を解明することを主眼としている。①ATPによるNHE1の活性制御。H24年度までの研究で、NHE1がATP結合蛋白質であることを報告した(FEBS J. 2013)。H25年度は、ATPがLIDに結合することを蛍光性ATPアナログTNP-ATPを用いた解析と平衡透析によって明らかにした(Mol.Pharmacol. 2014)。②薬理学的検討によるNHE1の活性制御の機構。私達はこれまで、NHE1活性化はPKCではなく、LIDを介するという仮説を提唱している(J. Biol. Chem. 2010; J.Mol.Cell.Cardiol.2013)。今回、30種類のPKC阻害剤として知られる化合物を入手し検討したところ、そのほとんどがPKCを阻害する濃度でNHE1の活性化を阻害せず、PKCは関与しないことが判明した。しかし、staurosporineと数種の類似体はNHE1活性化を阻害した。TNP-ATPを用いた解析により、これらの化合物はLIDに直接結合することによってNHE1活性化を阻害することが結論された(Mol.Pharmacol. 2014)。③NHE1の活性調節機構の仮説。以上の結果から、NHE1活性化の機構は次のように説明される。NHE1には常時ATPが結合し、静止状態で高いNHE1活性を維持している。ホルモンによってGPCRが活性化されると、DAGがLIDに結合し、形質膜内層の酸性リン脂質へのLIDの親和性が増加する。この際、ATPから酸性リン脂質への“switch”が起こると考えられる。LIDのこの動きがNHE1全体の構造変化をもたらし、細胞内H+の親和性増加を伴う活性化に導くと考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件)
Mol. Pharmacol.
巻: 85 ページ: 18-28
10.1124/mol. 113.089268. Epub 2013 Oct 17.
J. Mol. Cell. Cardiol.
巻: 61 ページ: 68-76
doi: 10.1016/j.yjmcc.2013.02.007. Epub 2013 Feb 18.
Biochem. J.
巻: 450 ページ: 179-187
10.1042/BJ20121515.